(第631回)
 F1イギリスGPはイギリスのモータースポーツファンにとって最大のイベントだということは言わずもがななのだが、モータースポーツという狭い枠(イギリスにおいてはモータースポーツは決して狭い世界ではないけど)にとらわれないイベントであることも先日の取材で再確認させられた。

 まずテレビのイギリスGPに対するスタンスが素晴らしいと思った。レースの中継は当然だが、その周辺をスマートに埋める手法は一見の価値がある。例えば朝の天気予報。全国の天気予報を流しながら「イギリスGPの行われるシルバーストーンは、足元が悪いのでゴム長を履いて行くように」なんて情報をさらりと流す。それを受けて現地からリポーターが詳細な情報を報告し、画面は続いてウィンブルドンの会場に変わる…。

 日本においても、オールスターの野球やサッカーのビッグゲームの時にはこうした気の利いた配慮がなされるだろうが、とにかくイギリスにおいてはモータースポーツは一般の人たちにごく普通に受け入れられるイベントとして、違和感なく溶け込んでいる感じがした。これは、F1グランプリを中継するテレビ局の努力のたまものだろう。広く視聴者を獲得するにはどうしたらいいのか、テレビ局の人は状況を良く把握しているということだ。レース観戦に行く人の心配は天気と渋滞だから。

 中継に関しても実に多彩なプログラムを組み、豊富な人材を多用して番組を盛り上げる。とにかく司会者も解説者も視聴者に向かって、F1グランプリはこんなに面白いスポーツだ、と話しかける。とにかく解説者は独りよがりの与太話に終始せず、番組を見ているのは全国の老若男女の視聴者だ、という点を忘れない。それにはF1グランプリとテレビの役目を十分に理解した解説者の起用が絶対条件だ。

 F1グランプリはテレビ・スポーツだとよく言われる。その言葉に私は100%くみすることはできないが、テレビのおかげで現在のポジションを獲得したことは確かだろう。それゆえ、F1グランプリはテレビに感謝し、テレビはF1グランプリを温かく報じる。実にうらやましい関係だと思った。今回のイギリスGPに接してつくづくそう感じた。(モータースポーツジャーナリスト)