(第641回)
 日本GPが迫って周辺が慌ただしいが、この日本GPを含めて残りレースがまだ6戦もあることを考えれば、チャンピオン争いに焦点が集まるのはまだ2〜3戦先になるだろう。というのは、現在のルールでは優勝者が獲得するポイントが25ポイントと大きいことから、この先の流れがどう変わるか見通せないからだ。50ポイント差をつけられていても、優勝を2回続ければその差は埋まる(ライバルが0ポイントならね)。だから現時点でランク首位のアロンソでさえ、慎重にポイントを重ねることを信条にしているのだ。

 では鈴鹿のパドックで一番の話題は何か? それは明らかに2013年のドライバーマーケットではなかろうか。先日、ハミルトンのメルセデス移籍、ペレスのマクラーレン移籍が発表され、上位チームの周辺に動きがでてきた。この2人の移籍でシューマッハーがメルセデスから押し出されたが、この一連の動きで一番得をしたのは…マクラーレンということになりそうだ。ペレスを支援するメキシコ企業がこぞってマクラーレンに移る可能性があるからだ。

 ペレス獲得は、ドライバーの能力を査定条件にしたなら、その答えはすぐには出ないだろう。ザウバーでこそ活躍したが、若い彼がトップチームのマクラーレンでこれまで同様の活躍ができるかは誰にも分からない。恐らくペレス本人でさえ知らないだろう。もちろん彼のモチベーションは非常に高いはずだが、トップチームで働くプレッシャーをどこまで自分の中で処理できるか、が焦点になるはずだ。

 では、メルセデスへ移籍したハミルトンの思惑は? 恐らく彼はマクラーレンF1チームの責任者がロン・デニスからウィトマーシュに移ってから、以前ほどマクラーレンの居心地は良くないと感じ始めたのかもしれない。おまけにマクラーレンへのエンジン供給を2015年までとしたメルセデスからの誘いに魅力を感じたともいえる。いずれにせよ、煮え切らないシューを追い出してまでハミルトン獲得に動いたメルセデスの「してやったり」に違いない。

 そして4日、シュー引退が発表された。一度引退した後に復帰、メルセデスで3年を過ごしたが、結局期待すべき成果は得られなかった。「うまくいかなかったけど、これまでやったことは満足。3年契約だったが、もうこれ以上は続けられない。バッテリーが切れてしまった」とシュー。

 一度引退し復帰後に成果を上げたドライバーはニキ・ラウダがいる。彼は復帰して王者に輝いた。シューもラウダの後を追うつもりだったのかもしれないが、かなわなかった。誰にも限界があることを、シューは教えてくれた。 (モータースポーツジャーナリスト)