(第643回)
 バラク・オバマ米大統領の再選が決まり、来年から第2期目の4年間、再びホワイトハウスで執務することになった。米大統領の本当の力は2期目に評価されるというから、オバマ大統領にとれば真の力の見せ場になるに違いない。景気後退、財政赤字と大変な時期だけに、手腕が問われることになる。

 ところで、このアメリカ大統領の1期の任期が4年である理由はいくつもあると思うが、4年目は次の選挙のための1年と考えると、実際には大統領就任後3年で実績を残すことが求められているといえる。それに比べるとF1ドライバーの息はかなり長い。一つのチームで2、3年過ごすのは普通で、いくつかのチームを渡り歩くと5年、10年というキャリアを積むことも可能だ。例外的に長いキャリアを誇るドライバーはルーベンス・バリチェロの19年を筆頭に、ミハエル・シューマッハーの19年、ジェンソン・バトンは13年、フェルナンド・アロンソも12年…。現役ドライバーの中にも長い経歴を誇るドライバーが多いことに気付く。

 もっとも、よく目を見開いてみると、バリチェロは例外として、他の息の長いドライバーはいずれも世界チャンピオン。これは、F1が実力の世界であることを如実に表している。つまり、世界チャンピオンほどの実力があれば、引く手あまただということ。もちろん年齢とともに力は落ちてきて、最後までトップクラスのチームに在籍できるかどうかは疑わしいが、チームを選択しなければ20年というキャリアさえ不可能ではない。

 しかし、彼らに求められるのもアメリカの大統領と同じで、2、3年の間に結果を出すこと。その結果とは優勝であり、あわよくば世界チャンピオンのタイトル獲得だ。デビューから3年以内に優勝できなかったドライバーで長く生き延びた者がいないのは(バトンは例外)、そういう「平凡」なドライバーにチームは興味を示さないからだ。

 そうでなくても先輩たちのシートを狙って多くの才能ある若者が列を作って待っている。今週アブダビで行われた若手ドライバーのテストも、チームはその中に「非凡」な才能を見つけようと必死だ。ということを考えると、今年3年目の小林可夢偉に必要なのはスポンサー資金ではなく優勝という二文字ということになる。それが、ペイドライバーではない彼に最も必要なものだろう。(モータースポーツジャーナリスト)