(第645回)
 F1グランプリは最終戦ブラジルGPを迎えて、セバスチャン・ベッテルとフェルナンド・アロンソのタイトル争いが盛り上がっているが、その一方でトップクラス以外のドライバーは2013年の去就にヤキモキしている。そのあたりも含めてドライバーの本音が見え隠れする。

 日本人の我々にとって最も気になるのは小林可夢偉の13年だが、来季ザウバーからマクラーレンへ移籍するセルジオ・ペレスは、自分の後継は同じメキシコ人のエスティバン・グティエレスに決まっていると公言していて、その通りになった。

 小林は外国誌に来季のF1シート獲得が困難なことを白状しているが、チームへの持ち込み資金の一部を賄うために一般に募金をお願いする運動を始めた。一口1万円からだという。その募金がどれだけのものになるのか、果たしてシート獲得の助けになるのか分からないが、彼にはF1で活躍してほしいと日本のファンは願っている。ただ、この募金活動がF1への逆キャンペーンにならなければいいがと少し心配している。

 小林のようにチームへ持ち込むスポンサー資金獲得に努力するドライバーもいれば、そうした活動は一切しないドライバーもいる。ケータハムのヘイキ・コバライネンもその一人で、彼はF1には残りたいがわざわざ資金集めまでせず、「金を集めてまで下位チームで走っても、誰も気にしてくれないので将来につながらない」とも。もちろんコバライネンもF1に残りたい。その気持ちを抑えて、精いっぱいの抵抗がこの言葉だ。

 来季の心配から解き放たれたフェラーリのフェリペ・マッサだが、彼には他人が味わえないプレッシャーがある。ブラジルGPでチームメートのフェルナンド・アロンソのタイトル争いを援助する役割だ。しかし、マッサは地元では少し異なったアプローチで役割を果たそうとしている。「僕が優勝してフェルナンドのタイトルを援助したい」という発言が意味深だ。

 普通であれば「フェルナンドの勝利を助けたい」とでも言うところだが、「僕が優勝して…」というのだから、「フェルナンドは2位に入ればいいんじゃないか」ということだろう。じゃあ、ベッテルが3位に来たらどうする? 知ったこっちゃない、というのが本音だろう。僕にはチャンピオン争いは関係ない、ということだ。こういうところにF1ドライバーの本音が隠れている。F1ドライバーとて人の子だ。そんな数々の渦巻きがあちこちに見える最終戦ブラジルGPが始まる。(モータースポーツジャーナリスト)