(第646回)
 今季のF1王者がベッテルからアロンソに代わるかもしれない、というニュースが流れている。理由はベッテルが最終戦決勝の4周目第4コーナーで前車(トロロッソのジャン−エリック・ヴァーニュ)を抜いたというもの。この区間は黄旗が提示されていた(実際には黄色のランプが点滅していた)。もしこの黄旗追い越しが立証されるとベッテルのレース時間に20秒が加算される。そうなれば6位でゴールしたベッテルの順位は8位に後退、獲得ポイントが8から4に減少する。その結果、アロンソに1ポイント負けることになりタイトルを逃がすことになる。

 フェラーリはまだ国際自動車連盟(FIA)に抗議していないが、もっか検討中。抗議してFIAが審査に乗り出せば、どんでん返しで王者はアロンソになる可能性がある。抗議の受け付けは11月30日までだ。

 このベッテルの黄旗追い越しの映像はテレビの国際映像では流れなかったものの、英国スカイTVが録画しているベッテルの車載カメラの映像には確かにベッテルが黄旗提示区間でヴァーニュを抜いた瞬間が捉えられている。が、そのすぐ前には雨滴で曇ったカメラのレンズにグリーンフラッグが振られているようにも見える。もうひとつベッテルを擁護するとしたら、ヴァーニュがベッテルに先を譲るように大幅に減速した様が見て取れることだ。ただしこれらはトロロッソのテレメトリーデータを解析しなければ分からない。

 ベッテルがヴァーニュを抜いた映像はYouTubeにアップされ、懇切丁寧な説明を付けているものまである。もしベッテルの違反が審議されることになり、映像が証拠として提示されるなら、ベッテルの立場は厳しくなるかもしれない。ただし、ルールによれば黄旗追い越しをしたドライバーのレース時間に20秒のタイム加算が行われるのは、違反がレース終了間際に行われた場合か、レース後に審査されると判断された場合。今回の違反は4周目に起こったもので、レース終了までにたっぷり時間がある今回のようなケースではペナルティーはドライブスルーが一般的。つまりベッテルの黄旗追い越しは、レース中にFIAによる審議の対象になっておらず、その場合にはレースが終了したいまFIAが独自に審査に乗り出す可能性は少ないと理解することもできる。審査されるとしたらどこかのチームかドライバーから抗議があった場合に限られる。よって今回の問題はフェラーリからの抗議次第ということになる。

 私は、チャンピオンはベッテルでもアロンソでもどちらになっても祝福するが、後味の悪い結果だけは残してほしくないと思っている。(モータースポーツジャーナリスト)