(第653回)
 米デトロイトで行われているモーターショーの会見で、ダイムラーのディーター・チェッツェ会長が「メルセデスF1チームは2014年にはチャンピオン争いに絡まなければならない」と発言した。メルセデスの不振原因はシャシーの性能不足で、今年それがいきなり良くなることはないが、来年(14年)にはエンジン規則も変わるので、それを機にタイトル争いに絡まなければ、と。

 独自動車メーカーはトップから裾野までモータースポーツを非常に大切にする。1年前にさかのぼるが、アウディはル・マン24時間への参戦を会社の年次報告会で発表している。つまり欧州におけるモータースポーツ活動と戦績は量産車販売ビジネスに直接影響を与えるため、経営陣も放っておけないのだ。

 それにつけてもモータースポーツビジネスは厳しい世界。10年から3年間で1勝しかできなかったメルセデスは、長年メルセデスのモータースポーツ活動の指揮を執ってきた責任者のノルベルト・ハウグを外し、代わりにニキ・ラウダを迎え入れた。ラウダのチーム運営手腕がどれほどのものか知る由もないが、彼はメルセデスに忠誠を誓ったのか、自身の航空会社ニキ・エアーの役職を降りた。覚悟のほどがうかがえる。ミハエル・シューマッハーの後釜にルイス・ハミルトンを引き抜いたのも14年のタイトルを狙ってのことだ。こういう決断を下せる経営者を擁する会社はうらやましいばかりだが、14年に期待されるタイトルを獲得できなければチェッツェ会長がポジションを降りるか、あるいはF1活動の休止もあるだろう。巨大な自動車メーカーだけに社内にはF1参戦に異を唱える分子もおり、彼らの意向も経営会議でおろそかにしないはずだからだ。

 それにしても、今年はF1パドックの顔ぶれが大きく変わる兆しがある。ハウグに次いで、フェラーリで10年以上広報担当をしていたルカ・カラジャンニが量産部門に移り、新しいスタッフがその座に着く。ザウバーの敏腕女性広報担当も退任した。人が変わればビジネスの仕方は変わってくる。それが吉と出るか凶と出るか、判断は時間がかかるだろうが、新しい流れは止められない。

 F1も14年の大きな変革に向け、少しずつ準備を始めたのかもしれない。 (モータースポーツジャーナリスト)