(第654回)
 F1が大変なことになっている。その要素は金と成績だ。金の方は以前から言われていたことだが、運営資金に窮するチームが続出し始めた。今年は参戦を見送ったHRTをはじめ、マルシャ、ケータハムなどが今季を戦う資金に窮している。

 そのためマルシャは、すでに契約金を支払い済みのT・グロックをクビにし、自己資金(スポンサーマネー)を持ち込めるドライバーを探している。ケータハムにしても優勝経験のあるH・コバライネン、昨年の最終戦で11位に入り、ベスト順位でマルシャを上回ってケータハムをコンストラクターズ10位に引っ張り上げたV・ペトロフを降ろし、スポンサー資金を持ち込めるドライバーと交渉中。さらにフォース・インディアにしてもしかりだ。

 昔から選手権下位の弱小チームは常に運営資金に悩まされていた。かつてはシーズン途中で何人でもドライバーをチェンジできたから、金を持ってくるドライバーを順番に乗せたチームもある。しかし、現在は何人でもいいというわけにはいかず、おのずと選択は限られる。ゆえに最初から金のあるドライバーに白羽の矢を立てる。経験が少ない新人でも仕方ないと割り切る。こうした金の犠牲になったのが小林可夢偉、コバライネン、グロックといった才能あるドライバーだ。

 しかし考えてみるとF1のドライバーは誰でも持参金を持ったドライバーということもできる。フェラーリにはF・アロンソがいるからサンタンデール銀行がスポンサーにつくし、レッドブルはS・ベッテルがいるから大金をはたいてチームを運営できる。S・ペレスがメキシコのテレメックスの支援を受けているのはご存じの通りで、P・マルドナドがベネズエラの国営石油会社をウィリアムズに持ち込んだのもよく知られている。

 この状況から脱するにはチーム運営費を縮小するしかないが、それには国際自動車連盟(FIA)やF1チーム協会(FOTA)が力を合わせ大なたを振るうしかない。技術者は技術向上のために資金を惜しまない。そこをルールで締め付けなければ、状況はいつまでたっても好転しない。

 F1ドライバーに要求される魅力は才能だけでなくエンターテインメント性、人柄、ルックスなど多くの要素があるが、そこに持参金という滑稽な要素が入ることには、私は反対だ。もちろんチーム代表はそんなことなど重々承知だろうが、引くに引けない事情もあるということだ。成績に関しては次週。(モータースポーツジャーナリスト)