(第655回)
 F1が大変なことになっており、その理由はお金と成績。先週はお金について書いたので、今週は成績について書く。お金に関しては最近、大方のチームの活動資金であるスポンサー企業の投資減が活動を縮小させることにつながり、チームは持参金持ち込みドライバー獲得に動き始めたという現実。それも中堅チームの動きが急で、これまでのF1にはなかったことだ。お金はチームの存続に直接関係のあることだから、生き残るために必死なのだ。

 成績はチームの存続に直接的な関わりはないように思える。ところがそうではない。特に自動車メーカーの直接参戦は、まさに企業の論理が持ち込まれるので存続問題は生々しい。ホンダやトヨタのF1撤退が本体(自動車メーカー)の経営と関わりがあったことは知られているが、成績不振も理由の一つだったことは否定できない。もし、彼らが好成績を続けていたらいきなりの撤退はなかったと信じている。

 今、この問題に直面しているのはメルセデスF1チームだ。ブラウンGPを買収して独自のチームに仕立てたはいいが、過去3年間成績がついてこない。メルセデス(ダイムラー)社内ではF1反対派が活動休止を訴えている。そんなメルセデスが現在もF1活動を続けているのは、ディーター・チェッツェCEOがF1をマーケティングツールとして認識しているからに他ならない。それでも勝利こそF1の価値であることを考えれば、そろそろ正念場に差し掛かっている。今年はなんとしても成績を上げ、メルセデスがF1活動を継続している理由と価値を世の中に見せつけなければならない。

 メルセデスF1の例に見るように、現代のF1は成績がお金と同様の働きをし始めたことをヒシヒシと感じる。それはかつて、F1チームが個人オーナーの趣味で始まった活動から、企業が参画するビジネスに変わったからだ。企業はあらゆる分野で成績を重視する。製品の質でも販売でも。そして最も評価の難しいマーケティングやプロモーションでさえ、それが製品の売り上げにどこまで影響を与えているかという数字を持ってきて、それらを成績と見なす。

 まあ、他人(とは限らないが)のお金で運営しているチームだけに、お金を投資する側が求めるものにチームが応えられなければ、チーム代表は降格、解雇を覚悟しなくてはならない。ロス・ブラウン代表がF1界でどれほど価値ある仕事をしてきたかは投資側にすれば投資の理由ではあっても、継続の理由ではないからだ。継続の理由は、ブラウンがこれからどれだけ価値ある仕事をするか、という点である。

 F1はもはや情熱だけで語れる世界ではなくなってきたのだ。それを寂しく思うか現実と捉えるかは、個人のF1を見る目の違いでしかない。 (モータースポーツジャーナリスト)