12年続いた本コラム最終回
(第656回)
 2月に入って次々とF1マシンの発表が続いている。ドライバーも決まって今年1回目の合同テストも始まった。こうした動きが伝わって来ると、やっと新しいシーズンが始まったと感じることができる。F1グランプリ開幕戦は約1カ月後のオーストラリアGP。それまでチームは大忙しだろうが、現行レギュレーション最後の年のF1、恐らくこれまでにない充実した戦いが展開されるだろう。

 ただ、小林可夢偉の不在でF1から日本色がすっかり消えてしまったことは寂しい限りだ。3年前のインタビューで小林が「F1に僕ひとりだけというのはプレッシャーです。僕がいなくなると日本とF1のパイプが途切れてしまう。なんとしても頑張らねば」と語っていたことを思い出して、世の中うまくいかないものだとあらためて思った。小林は小林なりに頑張ったのだが、国際ビジネスの壁は高かったということだろう。

 そう、F1はれっきとした国際ビジネスで、ドライバーはその国際ビジネスの世界で操られる株のようなものだ。投資に値する株には投資家が寄ってくるが、そうでないと離れていく。そしてその株の価値は速ければいいというものではない。堅調株であるアロンソ、ハミルトン、ベッテル、バトンなどには、株主が手放したくない何か特別な魅力があるということだ。もちろん、それらが備えている最低限の条件は国際株だということ。世界中のありとあらゆるところから投資家が目を光らせている株だ。

 ただ、日本色のない今年のF1、逆説的な見方をすればこの先何が起こるか分からない可能性を秘めているということ。来年以降、小林の復活があるかもしれないし、ホンダのF1復帰もささやかれている。ホンダは復帰に際してマクラーレンへのエンジン供給とともに小林を乗せたい意向を持っているとうわさで聞いた。それが実現すればF1における日本の存在は一気に花開くだろう。小林に続く若手ドライバーも育っている。あっという間に世代交代が起こるかもしれない。いずれにせよ、可能性は無限にあるということだ。

 というわけで、トンネルの中から遠くに見える明かりを頼りにしながら、12年間続いた本コラムの最終回に幕を下ろします。長い間、ありがとうございました。(モータースポーツジャーナリスト)