第194回
1993年全日本ロード125ccクラスで圧倒的な速さでチャンピオンに輝いた加藤義昌さんは、94年、チーム・アルパルからスペインの英雄ホルヘ・マルチネスのチームメートとしてグランプリに参戦した。(写真/赤松孝)
1993年全日本ロード125ccクラスで圧倒的な速さでチャンピオンに輝いた加藤義昌さんは、94年、チーム・アルパルからスペインの英雄ホルヘ・マルチネスのチームメートとしてグランプリに参戦した。(写真/赤松孝)
 たった一台のマシン。それを海外のテストで走らせると一体どのくらいの経費がかかるのだろうか。ワークスマシンを走らせるあるチームの関係者に聞くと500万円という答えが即座に返ってきた。マシンが2台になれば経費は約1.5倍。もちろんチームスタッフの飛行機代やホテルでの滞在費を入れてのことだ。

 マア、何と金の掛かることだろうか。チームを運営するのは本当に大変なことだと思う。それに比べれば、僕のようにカバンひとつでサーキットからサーキットへと旅を続けることなど、気軽で何でもないことのような気がする。

 しかし忙しさではあまり変わらない。3月になって、僕も本格的にシーズンの準備を始めている。航空チケット、ホテル、レンタカーの手配。そしてビザの申請などなど。取りあえず5月のスペインGPまでの手配は終わった。開幕戦のオーストラリアと第2戦マレーシアは日本からの往復。そして日本GPを終えるとヨーロッパへと旅立っていくことになる。

 それにしてもこの時期は、「ああ、また半年間の放浪の旅が始まるのか」と思うと気が重い。それに一層拍車をかけているのが、このところ続いたテスト取材。マレーシアに行き、スペインへと出かけ、今月は開幕戦の前に一度オーストラリアへ行くことになっている。日本にいる時間かあまりにも少ない。「すごいね、今年はまた一段と気合が入っているね」と友人たちに言われている。

 しかし、長いシーズンオフを終えてサーキットを走る選手たちの明るい表情を見ていると、「うーん、来て良かったな」と思う。なんたって表情が違う。オフに日本で見る時とはまるで違う生き生きとした顔つきの選手たちがサーキットにいるからだ。

 マレーシアのテストで見た原田哲也がそうだった。スペインで見た坂田和人、上田昇、加藤義昌もそうだった。その中でも加藤は、初めて迎えるシーズンということで緊張感と期待感とでいっぱいだった。加藤は、すでにスペインのドカドスカップでデビュー戦を2位で飾り、今週はカタルーニャで早くも第2戦を迎えるのだそうだ。そして、上田昇も同じレースに急きょ出場することが決まったようで、翌週には全日本の開幕戦出場とハードスケジュールをこなそうとしている。

 今週は、岡田忠之、伊藤真一、青木宣篤のホンダ勢がオーストラリアのイースタンクリークのテストに参加している。日本人選手は今、ハツラツとした表情で西に東へと世界中を飛び回っているのだ。

 開幕まであと3週間。これからは、ハツラツとした顔から次第に緊張した表情へと変わっていくことだろう。そんな選手たちの表情の変化も、こうしてテストを追っかけてるからわかるのだ。

 「また、取材に行くんですか?」。これもまたよく言われる言葉だか、出かけるたびにいろんな出来事に出合う。だからやめられない。

 世界GPに限らず、「ホント、スポーツっていいですね」と、僕は思うのだ。

■1994年3月3日掲載
 ○・・・今回の「復刻・世界2輪GPサーカス」を読んでいて、一回のテストで(昔も今も、テストは大体3日間ですね)1台500万円、2台だと1,5倍と書いていて、あれま、安い・・・と思いましたね。レース界のシステムなど、いろんなことが変わりすぎて単純に比較は出来ないけれど、いまならいくらかかるんだろうと思いました。当時、ウインターテストは、日本かオーストラリアで行なうというのが普通だったのですが、スペイン、そしてマレーシアがテスト地に加わることが多くなりました。マレーシア(当時はシャーアラム・サーキット)は、とにかく物価が安く、日本のサーキットで一日テストする費用で1週間テストが出来たという時代でした。

 今回、登場の加藤さんは、現役時代に所属していたヤマハで、安全運転のためのモーターサイクルライディングインストラクターをつとめていて、国内、ときには海外へと飛び回っていますよ。