92年Round 16 オーストラリアGP編
(92年11月12日掲載)
通算8勝目を喜ぶベルガー。しかしプロストは「この次の勝利はなかなかやってこない」と占う(C)Chunichi
通算8勝目を喜ぶベルガー。しかしプロストは「この次の勝利はなかなかやってこない」と占う(C)Chunichi
◆ Round 16 オーストラリアGP
◆92年11月6〜8日 アデレード市街地コース
 ▽PP N・マンセル(ウィリアムズ・ルノー)
 ▽優勝 G・ベルガー(マクラーレン・ホンダ)

「来年はベネトンが注目の的になる」

 いつもの年と同じように、オーストラリアGPはシーズンの最後を飾るにふさわしい、すばらしいレースになった。アデレードでは、いつも何かが起こるのだ。何か? そう、イタリアGPのころに136回目の和解をしたアイルトン・セナとナイジェル・マンセルは、オーストラリアで137回目の仲たがいをした。マンセルがいつもより早めにブレーキングをしたのか、それともセナが一瞬、不注意だったのか、僕には分からないことだ。いずれにしろ、彼らはふたりとも、パリの街中で毎日見られるような、ありふれた交通事故の犠牲になってしまった。

 これは、そんなに重要なことではない。ただ最後にマンセルが競技委員会に不平を漏らしたのだけは、まったく当然とは言えない行為だった。リカルド・パトレーゼがこのグランプリで優勝すれば、僕は満足しただろう。彼も、彼の慎重なドライビングも、その勝利にふさわしいものだったはずだ。これはゲルハルト・ベルガーに関しても言えることだが……。

 アデレードのコースは、本当にドライバーを選ぶ。だからこそ、予選でもレースでも、チームメートのペースについて行くことはリカルドにもゲルハルトにもできなかった。パトレーゼはトップを走りながら、トラブルでコース上に止まってしまった。僕は電気系のトラブルが原因だと考えていたけれど、本当は燃料ポンプのトラブルだった。

 レースをコントロールできていたし、ベルガーの存在も不安ではなかったと、パトレーゼは話した。でも彼が本当に状況を判断できていたか、僕には疑問だ。マクラーレン・ホンダがすごく進歩してきたことに、僕は気付いていた。大きな進歩だ。だからなおさら、ホンダがF1から撤退してしまうことが、僕には残念で仕方がないのだ。逆に、ベルガーはレース中、最高のタイミングでタイヤを交換する。見事な選択をしたと思う。パトレーゼも同じ作戦を取った方がよくはなかったか、そこのところが僕の疑問だ。でも彼がリタイアしてしまったので答えは分からない。

 こうしてベルガーはオーストラリアGPを勝利で飾った。本当に、彼を祝福したいと思う。僕の意見を言うなら、彼が次にグランプリで優勝できるのがそう近い日ではないから、なおさらなのだ。理由は、彼がフェラーリと契約したから、そしてフェラーリが立ち直るまでにはまだ時間がかかるだろうから。また、フェラーリが立ち直ったとしても、彼はチームメートのアレジと戦わなくてはならないのだ。彼はマクラーレンに残った方がよかったのではないだろうか? たとえ、セナと組んだとしても。

 アデレードで、ルノーは来年もウィリアムズとリジェにエンジンを供給することを明らかにした。パリで、僕はルノーとエルフの幹部と長時間話し合ったが、彼らは次のような結論に達したのだ。もしロン・デニスがシェルと別れたくないとしたら、それは、彼がルノーとの1年契約を望んでいるからだ。たった1年の契約だ。なぜ1年なのか? 彼が94年にはルノーに代わる選択を考えているからだ。ひとつは、マクラーレンがマクラーレン自身のエンジンを作っていること。もしくは、マクラーレンはアウディのエンジンを搭載することになるからだ。

 みなさんもお気付きのことだと思うけれど、シーズンオフはそんなに長くはない。そしてひとつ確かなことは、フラビオ・ブリアトーレとベネトンは、フォードV8の独占権を持っているということ。そしてマクラーレンにHBシリーズ8やシリーズ9を譲るつもりはないということだ。

 ところでベネトンに話を移すと、ミハエル・シューマッハーはまたしてもすばらしいレースを展開した。そして彼のチームも、どんどん進歩してきている。フォードV8、ポルシェが特許を持つPDKのギアボックス・システム、そしてアクティブ・サスペンションを備えれば、来年はこのチームが注目の的になったとしても不思議ではない。(訳・今宮雅子)

(次回から93年独占手記「マイバトル93」を掲載します)