【ペンネーム】MANATY(千葉県)
【Question】初めまして。このコーナーをいつも楽しく読ませて頂いてます。早速ですがヨーロッパGP決勝でのハミルトンについて質問です。大雨1コーナーでコースアウトしグラベルにつかまってリタイアかと思いきや、レッカーで吊されコース上に戻されるとレースに復帰しました。一昨年か昨年でしたかミハエル・シューマッハもコースマーシャルに出してもらいレース復帰して特にペナルティを受けなかったように記憶してます。近年F-1のレギュレーションが毎年のように変わりその辺りの事が観戦している側にはイマイチよくわかりません。なぜハミルトンがペナルティにならなかったのかとF-1におけるリタイアの条件を教えて頂けますか。よろしくお願いします。

【ペンネーム】J☆桑燮(東京都)
【Question】今宮さんのQ&Aやコラムはいつも楽しみに拝見しております。さて、ヨーロッパGP序盤では急激な降雨により大変な荒れたレースとなってしまいましたが、ハミルトンも含め多くのドライバー達が餌食となったあのコーナーとグラベル。その中でハミルトンだけがオフィシャルの手どころか機械(クレーン)を借りて“前代未聞”のコース復帰をしました。そしてレース中では何のペナルティーもなく完走しましたが、アレってルール上はOKなのでしょうか?? 誰しもが気になっている事だと思うのですが。

【ANSWER】
 MANATYさん、J☆桑燮さん(←文字化けしていたら、ごめんなさい)はじめ、たくさんの方から同様の質問をいただきました。“アロンソ頑張れ”さん、“ゆきぶー”さん、“ぜっと3”さん、明貴さん、ありがとうございます!

 ハミルトンのびっくり復活。レースを知ってる人ほど“あれって、いいの?”って思いますよね。赤旗中断の間には、プレスルームでも物議を醸していました。いくつかのルールが関わってくる問題なので、できるだけ整理してお答えしますね。

 今回のハミルトン、とても稀なケースなのですが、結論から先に言うと、彼を失格にする条項はありません。まずいちばんの基本は、マシンがコースアウトして止まった場合、コースオフィシャルたちはできるだけ迅速に、そのマシンがレースの妨げにならないよう安全な位置に移動する責任を負います。あくまで、レースの円滑な進行と安全のためのルールです。

 本来、ピットやパドック、グリッド上を除いて、止まったマシンに触れることができるのはドライバーだけですが、この場合のオフィシャルさんはもちろん、任務遂行のためにマシンに触れることが許されます。

 もし、ハミルトンのマクラーレンが本コースにアクセスできない位置に下ろされていれば、レース復帰は物理的に不可能でした。でも、1コーナーに止まった台数を考えると、自力走行でピットに戻ってくれるマシンがあれば、そうした方が現場処理は容易になります。マクラーレンはエンジンが止まっていなかった様子ですので、(おそらくピットから指示されたハミルトンの希望もあり)コースオフィシャルさんの判断で本コースに戻したということだと思います。

 こうした場合、普通ならリタイアするしかなかったはずのドライバーが、何のペナルティも受けずにレースに復帰していいのかどうか……? MANATYさん、“ゆきぶー”さん、モントヤと接触してヘアピンで止まったM・シューマッハーが、オフィシャルさんに押してもらってレースに復帰したのも、03年のニュルブルクリンクでした。“オフィシャルさんがマシンを触ったら、そこで失格”が一般通念だった当時のこと「ドイツだからねぇ」なんて話題になりました。03年までのF1競技規則には、レース中に止まったマシンに関して「撤去するためのマーシャルの援助の結果、エンジンが再始動してドライバーがレースに復帰できた場合、そのマシンはレース結果から削除される」という一文がありましたが、04年からはこの一文が消えています。そして05年のF1競技規則からは、オフィシャルさんの撤去作業に関する項目全体が消えています(すべて、国際競技規則に準ずる、ということですネ)。

 最後に“アロンソ頑張れ”さん、“ぜっと3”さん、“明貴”さん、たしかに、今回はハミルトンだけが優遇されたようにも見えました。次々に他のマシンがコースアウトしてくる中、彼だけがマシンを離れずにいたこと、エンジンがかかったままであったことが、その理由の客観的な説明になると思います。ただし、撤去作業はコースアウトしたドライバーをレースに戻すことより、あくまで現場の安全確保が第一義。その意味で、危険な位置に止まったマシンに乗ったままでいる行為は勇気がある反面、みんなが同じことをするとオフィシャルさんにとっては心配のタネを増やすことにもなると思います。