【ペンネーム】クニさん(岡山県)
【Question】僕はデビットクルサードの大ファンなんですが、チャンピオンになれないのはなぜでしょうか?

【ペンネーム】暑がりさん(兵庫県)
【Question】こんにちは!初めて質問します。ずばり質問します。なぜクルサードはチャンピオンになれないのでしょうか?彼とミハエル、彼とハッキネンの違いは何なんでしょうか?以前から、このF1という世界の中で華々しいキャリアを築く人とそうでない人の違いって何なのか考えています。ちょっと漠然とした質問ですが今宮さんはどうお考えかお聞かせいただければうれしいです。

【ANSWER】
 うーん……。ふたりの方から、同じ内容の難しい質問をいただきました。“クニ”さんに私から質問です。クルサードが大好きな理由を教えてください。

 世界から選び抜かれた20人が走っていても、勝てるのはその中のひとりだけ。今シーズンはすでに7人の勝者が生まれていますが、チャンピオンはやっぱりひとりです。チャンピオンになれるドライバーと、なれないドライバー。まず“暑がり”さんの質問について考えてみました。

 アイルトン・セナやアラン・プロスト、ミハエル・シューマッハーやミカ・ハッキネン。F1現場で彼らを見ていると、語弊があるかもしれませんが“決して幸せそうには見えない”という印象を共通して受けました。走ることが好きでドライバーになったのだから、彼らはみんな基本的には幸福です。でも、そこで「勝ちたい!」という気持ちが強すぎると、勝てないかぎり本当に幸福にはなれない。そしてどんな世界でも、勝負であるかぎり100%勝利が保証されることはないですよね?

 そこに、どんなに追い求めても“満たされない”部分が生まれるのだと思います。2回以上タイトルを獲得したドライバーたちはみんな、いつもそうした渇望を抱えているように見えました。

 「いいヤツであるかぎり、チャンピオンにはなれない」と、F1ではよく言われます。先日もホンダのエンジニアの方と話していて「セナって、勝つためなら何でもやったよネ」という話題になりました。たとえば予選用タイヤが存在した時代。彼はトップのタイムを記録した後、同じタイヤではもうグリップが下がってタイムが出ないにもかかわらず、走り続けていました。故意に妨害するラインを走らなくとも、アタック中のドライバーは他のマシンが視界に入っただけで、ほんの僅かであってもアクセルを緩めるからです。もちろん、そんなセナを「汚い」と批判する人もいました。そんな、スレスレの貪欲さが彼にはあり、最終的にそれはセナというドライバーの魅力の一部であったのです。

 ハッキネンはコース上でもその言動においても本当にフェアなドライバーでしたが、彼の信じられないようなコンセントレーションは、身を削るようにして生まれていた気がします。世俗とはまったく遊離した自分だけの世界に入っていくため、彼はきっと日常の多くを犠牲にしていたのだと思います。そうしないと、彼にとっての走ることの意味は生まれなかったのです。早い段階での引退は、彼のようなドライバーなら理解できるものでした。

 セナはいつも淋しそうでした。プロストはいつも不満気で、ハッキネンは時には哀しそうにも見えました。シューマッハーは……機嫌が悪そうに見えます(笑)。

 94年にデビューして以来、デビッド・クルサードは、そのキャリアのすべてにおいて勝つチャンスのある、トップチームのマシンに乗ってきました。97年、01年、02年にはチームメイト以上の成績を残し、優勝も13回経験しています。「どうしてチャンピオンになれないの?」と思いますよネ。

 F1の世界でも、クルサードのことを悪く言う人はいません。テストでも不平を口にすることなく多くの距離を走行する彼には「本当に感謝している」というエンジニアの言葉も耳にします。ハッキネンはテストで走り過ぎるとレースの週末の集中力が乱れてしまうドライバーだったので、クルサードがその分も引き受けていました。彼の経験でクルマを作っているから、ライコネンも速く走れるのだと思います。

 ハッキネンの優勝に沸くマクラーレンのモーターホームで、彼が荷物を肩にかけ「じゃ、僕はこれからまたテストの旅に出るから」と言って、みんなを笑わせたことがありました。そんな役割を、彼は引き受けすぎているのかな、とも思います。

 貪欲に、ワガママに、人のものを奪ってでも勝つという姿勢−−それはもちろん、外から見る人々に「傲慢」「勝手」場合によっては「汚い」とさえ批判されるものですが−−が、クルサードには足りないのかもしれません。でも逆に言うと、そんな彼だからどんなドライバーと組んでも優れた仕事ができ、チームに大きく貢献できるのです。だからこそ、彼はずっとトップチームで走ってきたのだと思います。

 「デビッドはそんなドライバーじゃないよ」というファンの方、ご意見をお聞かせください!