【ペンネーム】ノン(東京都)
【Question】トーチュウのカルトクイズで「F1でPP、優勝、ファステストラップを一度に達成する事を何という?」の回答が「ハットトリック」だったのですが、普通海外では「トリプル」じゃないのでしょうか?  ハットトリックはサッカーが流行ってから日本のマスコミが使いだしたのであって、「F1では」と制限するにはかなり無理があると思うのですが…

【ANSWER】
 20世紀になって発展したモータースポーツの世界では、他のスポーツから転用されている用語がたくさんあります。“ハットトリック”もそのひとつで、もともとはクリケットで生まれた言葉。ひとりの投手が連続3球で3打者をアウトにすることを意味しているようです。そしてその場合、投手に新しい帽子が贈られたことから“Hat Trick”と呼ばれるようになったのだとか。

 ハットトリックという言葉は、クリケット以外でも多くのスポーツで使われるようになりましたが、意味はそれぞれのスポーツで異なります。サッカーでは、ひとりの選手が1試合で3点以上のゴールを決めることを言いますよネ。F1では、ひとつのレースでポールポジション、優勝、ファステストラップを獲得すること。

 日本ではサッカーの方がこの言葉を耳にするかもしれませんが、F1でも昔からハットトリックという言葉は使用されています。歴史上最初のハットトリックは、ファン−マヌエル・ファンジオが1950年のモナコGPで記録したもの。

 ジャーナリストの“バイブル”であるマールボロ・ガイドにも“ハットトリック”の記録のページがあります。歴史上、最多のハットトリックを記録したのはミハエル・シューマッハー。70勝のうち16勝がポールポジションからスタートし、ファステストラップも記録した勝利です。2003年にも彼はサンマリノ、オーストリア、イタリア、アメリカでハットトリックを達成しました。2002年にも4回、つまりこの2年で8回のハットトリックという記録は、02年のフェラーリの強さと同時に、03年のレースが接戦で速さを緩めることができなかった、という傾向も示していると思います。

 シューマッハーに次ぐ勝利数、51勝のアラン・プロストはハットトリックの記録が8回。予選の順位に執着せず、レースでもペースを抑えてマシンを労り、確実な勝利を目指したプロストらしい記録です。

 アイルトン・セナの場合も、ハットトリックは意外に少なくて7回。彼の時代には常に強敵が存在したこと、またキャリアの後半には勝利のために速度を緩めるレースコントロールを彼が習得したことを思い出します。

 1シーズンに4回のハットトリックを記録したのは、シューマッハーの他には52年のアスカリ、92年のマンセル、98年のハッキネン。他を圧倒するマシンを手にしていないと、こういう記録は生まれないのだとわかります。また、ハットトリックを達成した多くのドライバーがチャンピオンに輝いたことを考えると、03年のドイツで勝利したモントヤのこれからも楽しみです。

 最後に……。F1には競馬の世界からやって来た“パドック”という言葉もあります。また、フランス語ではチームのことを“エキュリ”と言いますが、これはもともと“厩舎”の意味。ちなみに、ハットトリックに当たる言葉はフランス語にはありません。