第2戦マレーシアGP編
完勝を喜ぶハミルトンとチームスタッフたち(AP)
完勝を喜ぶハミルトンとチームスタッフたち(AP)
 3月30日に行われたF1第2戦マレーシアGP決勝は、L・ハミルトン(メルセデス)がポールtoフィニッシュで今季初勝利(通算23勝目)を挙げた。東京中日スポーツ評論家・今宮純さんは、L・ハミルトンの完璧な勝利はドライビングスタイルの変化に負うところが大きいという。

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 メルセデス第1期F1活動は54〜55年、12戦で9勝したその最後のイタリアGPにワンツーフィニッシュし、“銀の矢伝説”を締めくくっている。第2期は2010年から、チームとしての復帰が話題になったが、勝利するまでに足かけ3年を費やした。迎えた5年目、第2戦マレーシアGPでハミルトンとロズベルグが59年ぶりのワンツー、レジェンド復活にふさわしい完全勝利を飾った。

 金曜から土曜まですべての走行セッションで2人がトップ完全制圧、最速マシンパフォーマンスをライバルに見せつけていった。猛暑のフリー走行でハミルトンに今までとは一味違う「タイヤに優しい」ドライビングを感じた。

 今年は動力が新パワーユニット(PU)に変わったため、パワー&トルクの出方が唐突になりがちで、それをアクセルコントロールによってなだめる工夫が必要だ。ハミルトンはまさに、タイヤの横滑りや縦滑り(ホイールスピン)を予知するかのように抑え、コーナリングラインを狙い通りに保ち、速すぎず遅すぎず的確な通過速度をキープした。がむしゃらに攻めるタイプのハミルトンが、高温でタイヤに厳しい今季2戦目にイメージチェンジだ。

 2戦連続のウエット予選で2戦連続のPP。タイヤに優しいアクセルコントロールは雨で滑りやすい路面でも発揮された。しかし初戦2周しかできずリタイアしたハミルトンは、56周レースの“燃費管理”が未経験、ロズベルグに一日の長があると思われたが…。

 ハミルトンはスタートから一気に攻め、1周目2.070秒、2周目3.282秒、3周目4.098秒リード。この強烈なダッシュは昨年までのイメージそのまま、満タン100kg燃料搭載マシンでこのハイペースに2位ロズベルグは対応できなかった。おそらくこの3周を新PUハイブースト状態(回生力最大)で行き、燃料を消費してもリードを築いてしまい、それからローブーストで“燃費管理”する戦術だったのだろう。だがこれにはリスクが伴うし、重いマシンで全力走行するのだからタイヤには相当の負担がかかる。

 ところがハミルトンより先にロズベルグのほうがミディアムタイヤの摩耗を抱え、14周目にピットに駆け込む。スタートダッシュの3周を決めてからは12周をタイヤと燃費をきっちり管理して15周目にピットイン、全く見事なレースマネジメント。PPスタートから全周回トップ、そして最速ラップ(53周目)の、超完全試合勝利はハミルトン自身初めてのことだった(現役ドライバーではベッテル4回、アロンソ1回)。

 「道のりはまだまだ長いですよ」。レース2時間後、小林可夢偉はそう言いながらケータハム・チーム技術陣とのミーティングに急ぎ足で向かった。決勝まで12周しか走れないままスタートした可夢偉は、ぎこちない挙動をするケータハムで2回ピット作戦を実行。ベストタイムはメルセデスのハミルトンより4.687秒も劣るのに、1周遅れにとどめた13位は入賞に値するレース内容だ。それを褒めると彼はそう答えたのだった。

 最下位脱出、マレーシア・チームの地元でマルシアを抜いた戦果は大きな意味を持つ。また新人エリクソン14位で2台完走したことによってチームは豊富な実戦データを収集できた。足取りも軽やかに夜のミーティングに向かう可夢偉の後ろ姿に、この小さなチームを背負うエースらしさを感じた。