“コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8耐特別編(14)
au&テルル・KoharaRTから8耐に参戦する大久保光。決勝レースでの走りに期待しています(カメラ=竹内英士)
au&テルル・KoharaRTから8耐に参戦する大久保光。決勝レースでの走りに期待しています(カメラ=竹内英士)
 今季からスーパースポーツ世界選手権(WSS)600に参戦している大久保光。まだ、思い通りの結果は残せていませんが、レースのたびに前進しています。海外レースで力を発揮するには、海外の空気というか、外国人のムードに飲まれないことが大事。どうしても言葉の壁や習慣の違いで、日本人は萎縮しがちですが、大久保は初戦から、そんなハンデを軽々と乗り越えているような気がします。これって、一つの才能です。

 開幕戦オーストリアのパドックイベントの壇上。司会者から「日本人と言えばカラオケ。大久保くん、自慢の歌を披露してくれたまえ」的なムチャぶりに、大久保は大観衆を前で、イギリス出身の男性ロックバンドQueenの「We Are The Champions」を熱唱!大歓声を浴びます。そこから、彼は親しみを込めて「シンガー」や「ひかり」とパドックで呼ばれるようになります。

 世界で戦うという願いを叶えた大久保は、もうひとつの夢を叶えます。それが“コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)への参戦。大久保は「5歳のとき、ポケバイのイベントで初めて鈴鹿8耐を見ました。ウルトラマンレーシングを1コーナーで応援してたんです。圧倒的スピードに、将来は絶対にここで走るライダーになるって決めました。あの経験がなかったら、今、レースをしていないかも知れない」と言います。

 大久保にとって鈴鹿8耐は夢の舞台となり「名前を売らないと参戦できない。そのためには世界選手権を走るライダーになること」が近道だと考えました。そしてWSSライダーとなり、ついに鈴鹿8耐に出られるチャンスがやってきます。au&テルル・KoharaRTの秋吉耕佑、ダミアン・カドリンに続く第3ライダーのオーデションを受ける機会が巡ってきたのです。大久保は高鳴る胸の鼓動を抑えて、それでもちょっとテンション高めでオーディションに挑み、2分12秒台を記録。見事第3ライダーのポジションをゲットします。

 そして今月4日からの鈴鹿8耐合同テストで、初めて本格的に大排気量のバイクでの走行を経験します。2日目の走行では転倒もありましたが、2分10秒5までタイムを短縮。「表彰台に上るためには、10秒台のアベレージが必要、ふたりに迷惑をかけたくないから、10秒を切りたい」と語っていました。そして最終日、遂に2分09秒台に突入します。

 Team ON(清成龍一主催のトレーニングチーム)の一員の大久保が「9秒台入りました」と清成に伝えると、そこにいた加賀山就臣や玉田誠も「嘘!」「嘘をついたらダメだ」「本気にする人もいるよ」と声を上げていました(笑)。大久保は「本当です」と反論。でも、先輩ライダーたちの反応は、それくらい大久保の成長が素晴らしいということの表れです。

 鈴鹿8耐では、1台のマシンを3人で乗るため、自分のセットアップで走れるわけではありません。マシンもタイヤも、通常戦っているものとは違うなかで、走るたびにタイムアップして行くのは並大抵ではないことを、先輩ライダーたちは充分に知っているのです。ましてや、大久保は乗り始めたばかりなのですから…。

 「秋吉さんが丁寧に指導してくれますし、まだまだですが、WSSで鍛えられたことが大きい。初めてのサーキットで3日間の限られた時間で結果を出さなければならない厳しさが、集中力を鍛えてくれました」

 WSSに参戦して間もないですが、大久保は、凱旋ライダーとして鈴鹿8耐にやってきたのだなと思うのです。食い入るように見つめてきた、WSBで活躍していた芳賀紀行、加賀山就臣、清成龍一らと同じ舞台に立った誇らしさで胸をいっぱいにした大久保はどこまで自分を高めて行くのでしょう。