“コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8耐特別編(16)
イギリススーパーバイク選手権で絶好調のレオン・ハスラム。親子で力を合わせて8耐制覇に挑みます(カメラ=佐藤洋美)
イギリススーパーバイク選手権で絶好調のレオン・ハスラム。親子で力を合わせて8耐制覇に挑みます(カメラ=佐藤洋美)
 “コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)にカワサキから柳川明、渡辺一樹と組むレオン・ハスラム。レオンはイギリススーパーバイク選手権(BSB)にカワサキから参戦、現在3勝を挙げ、タイトル争いを繰り広げています。鈴鹿8耐復帰3年目での勝利を目指すカワサキにとって、カワサキマシンを駆り、速さを持ったレオンの加入は、心強いものです。

 レオンは、2008年に桜井ホンダから鈴鹿8耐に初参戦。2013、2014年はハルクプロから参戦し、高橋巧、マイケル・ファンデルマークと組んで優勝を飾っています。8耐優勝を経験していることが、カワサキ加入の決め手でもありました。

 7月4日から3日間行われた鈴鹿8耐公開合同テスト、ピットにはレオンの傍らに父、ロン・ハスラム(元ロードレース世界選手権ライダー)がいて、彼をサポートしています。記念撮影のときに一緒に写ってほしいと頼むと、「エッ」とちょっと困ったような顔をしましたが、柳川や渡辺にお願いされると快く写真に納まってくれました。
ロン・ハスラムもすっかりチームに溶け込んでいます(カメラ=竹内英士)
ロン・ハスラムもすっかりチームに溶け込んでいます(カメラ=竹内英士)
 ロンは1977年デビューから1993年までWGPに参戦。現役時代は抜群のスタートで、ロケット・ロンと呼ばれ、ワイン・ガードナー、エディー・ローソンら世界チャンピオンライダーとトップ争いを繰り広げ、その姿にファンは熱狂していました。レオンは「僕が生まれて6ヶ月くらいからWGPを転戦していたんだ。だから、僕はWGPパドックで育った。1歳くらいのときは鈴鹿にも来ている。もちろん、覚えていないけどね。記憶があるのは3〜4歳くらいからだけど、レースは僕の人生に深く係わっている。それは父親の影響が大きい」と言います。

 レオンは、当然のように8歳からモトクロスに乗り始め、すぐに頭角を現しチャンピオン争いをするようになります。ですが、2年連続で、最終戦で足を骨折して入院してしまうのです。ロンとアン(母親)は交代で看病しますが、病院で横たわるレオンの姿に、ロンは耐えられなかったようで「お願いだから、もうレースを辞めてほしい」と懇願します。「他のことならなんでも応援するからレースはもう辞めよう」と…。

 ですが、レオンは母アンに、レースを続けさせてもらえるように父を説得してほしいと頼むのです。アンは「子供の願いを聞いてあげてほしい」とロンを説得。レオンも「もうケガはしないから応援してほしい」と頼み込み、ロンはその真剣さに打たれ、ロンをサポートするようになります。その後、もちろん、レオンはチャンピオンを連続で獲得し、才能を開花させるのです。

 そして、レオン13歳の1996年WGPイギリスGP。サポートレースが行われ、参戦のチャンスが舞い込みます。レオンは足が届かないくらい小柄だったこと、年齢が達していなかったことなどありましたが、特別許可をもらい、初めてロードレースに挑戦。レオンは、俊足を披露。ロンを知る現役WGPライダーのバレンティーノ・ロッシやマックス・ビアッジらが応援するなかで勝ってしまうのです。ロンもレオンの才能の前にもう何も言えなかったよう。そこから本格的にレースに取り組み、WGP参戦、スーパーバイク世界選手権(WSB)、BSBとキャリアを積み重ねています。

 ロンは「バイクに乗って欲しいと頼んだ覚えも勧めた覚えもない。でも、レオンは、レースへの情熱で僕を説き伏せた。その走りたい、勝ちたいという思いの強さは誰にも負けないと感じる。それはいいライダーの要素、その気持ちがあるから、目的を達成することが出来る。そのために、助けになりたいと思っている」と言います。レースを続けることを許した時に、ロンは最大限のサポートを誓ったそうです。

 レオンは「父は僕が直さなければならないところを指摘して批判してくれる。マシンに関しても詳しいし、コース上で走りを見て的確にアドバイスしてくれる。感謝している」といいます。
左腕にあるタトゥー。父ロン、母アン、4歳の娘エバと2歳の息子マックスが入っています(カメラ=佐藤洋美)
左腕にあるタトゥー。父ロン、母アン、4歳の娘エバと2歳の息子マックスが入っています(カメラ=佐藤洋美)
 レオンの左腕には父親と母親、4歳の娘エバと2歳の息子マックスの入れ墨が入っていて家族が何よりの支えで大事なものだと感じます。レオンは「次はオリビア(奥さん)を入れる」と笑顔。

 カワサキはレオンに加え、ロンという強力なサポートも手に入れただなと思います。ロンは1979年の鈴鹿8耐にやってきて、ホンダブリテンレーシングチームで2位表彰台を獲得しています。レオンは2度も優勝していますが「過去の優勝ではケガもあって、思うように自分を出せていなかった。今年はこれまで以上に、しっかりと自分の走りをしたいと思っている。柳川も渡辺も素晴らしいライダーだから、きっといいレースが出来ると思う」とカワサキ勝利に貢献することを誓っていました。