“コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8耐特別編(20)
ヤマハエースライダーの中須賀克行。ヤマハワークスで走ることに誇りを持ち、鈴鹿8耐に臨みます(鈴鹿サーキット提供)
ヤマハエースライダーの中須賀克行。ヤマハワークスで走ることに誇りを持ち、鈴鹿8耐に臨みます(鈴鹿サーキット提供)
 “コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)に向けてのヤマハファクトリー記者会見が、27日に都内で行われました。この会見で「勝って兜の緒を締めよ」のことわざを思い出しました。故事ことわざ辞典には『成功したからといって気をゆるめず、さらに心を引き締めろ』という戒めだとのこと。戦いに勝って、ほっと一息ついて兜を脱いだとき、ふいに敵が襲ってくるとも限らないから、勝ったとしても油断せず、さらに用心せよという意味。英語では、『Don’t halloo till you are out of the wood.(森から抜けきるまでは歓声を上げるな)』だそうです。

 昨年の鈴鹿8耐のヤマハファクトリー優勝は、全日本ロードレース選手権王者の中須賀克行と現役モトGPライダーのポル・エスパルガロとブラッドリー・スミス、この3名が絶好調のヤマハニューマシンYZF−R1を駆り、ポルもブラッドリーも「モトGPのM1のよう」と絶賛。中須賀がしっかりふたりを引っ張り、圧勝したというもの。ですが、人の記憶は曖昧なもので、実際はポルの黄旗無視のペナルティーや何度もペースカーが入る波乱を乗り越えての優勝であって、ヤマハ陣営は楽勝とは考えてはいなかったのです。

 この勝利の後で反省会が開かれ、150もの改善点を出し、それを、ひとつ、ひとつ、つぶしていく作業を1年かけてやってきたと言います。エンジンの耐久テストに関しては「ほぼ毎日と言っていいほど、ベンチを回していました」と語る、辻幸一技術本部MS開発部長の声は、会見場に重く響き、感動で包んでいたように思います。
7月27日に開かれたヤマハファクトリー記者会見のようす(カメラ=佐藤洋美)
7月27日に開かれたヤマハファクトリー記者会見のようす(カメラ=佐藤洋美)
 鈴鹿8耐事前テストで中須賀を取材した時、彼はヤマハブル―に染められたチームシャツの胸部分に入ったヤマハの文字を叩くように「俺はこのチームに誇りを持っている。ヤマハの看板を背負って走ることに大きなプレッシャーを感じている。ファクトリーライダーに恥じない自分でいるために、出来ることは何でもやっている」と言い放ちました。全日本ロードレース選手権JSB1000では昨年から10連勝、それもポールトウウィンの圧勝で「勝って当然」というムードが漂い、ライバルも戦意喪失しているようにさえ見えます。今回の鈴鹿8耐でも、ヤマハ有利の下馬評に「勝って当然のレースなんてない」と…。

 鈴鹿8耐事前テストは6月下旬に中須賀、ポル、今年加わったアレックス・ローズが揃ってのプライベートテストが2日間行われていました。最初の公開合同テストには出ず、最後の4メーカーとタイヤメーカーテストに中須賀とローズが参加しました。ヤマハファクトリーチーム、ヤマハ耐久チームのヤート、そしてフランスヤマハのGMT94と3チームがピットに並び、ここにヤマハありの存在感は、本番さながらの緊張感が漂っていました。そこから中須賀とローズが並んでコースインする姿は威風堂々で、見守る報道陣から「かっこいい」とため息が漏れるほど。揃って1、2タイムを叩きだす速さに誰もが圧倒されていました。

 それもそのはず「150もの改善点を出して、それをつぶし、良いこところは更に伸ばして来た」と語るヤマハの姿勢には鈴鹿8耐2連覇への大きな覚悟を感じたからなのです。いよいよ、本番、1年の成果を示す戦いが始まりました。