ワイルドカード参戦した日本GPは21位に終わった浦本
ワイルドカード参戦した日本GPは21位に終わった浦本
 前回のコラムでは、2016年ロードレース世界選手権(WGP)日本GPツインリンクもてぎでの女子たちの奮闘ぶりを取り上げましたが、今回は男子編です。モトGPには中須賀克行がワイルドカード参戦、モト2には中上貴晶が参戦中で、ワイルドカードで長島哲太(FIM CEV レプソル選手権)、全日本ロードレース選手権JGP2の浦本修充、関口太郎、モト3には参戦中の尾野弘樹、鈴木竜生に加えて、ワイルドカードで佐藤励が参戦しました。

 モト3で尾野は3位となりますが、チームのミスで失格、幻の表彰台となりました。ですが、その走りはGPライダーそのもの。モト2中上(4位)も表彰台を争う激闘でファンを大いに沸かせてくれました。モト3の鈴木は15位。モト2の長島も14位とポイントを獲得。長島は成長を示し、来季はモト2復帰という嬉しいサプライズ発表でも注目を集めました。

 全日本ロードからのワイルドカード参戦組は、浦本がモト2に参戦し21位、関口が22位(最下位)、モト3佐藤はケガで決勝参戦出来ませんでした。女子の岡崎静夏も26位(最下位)。ワイルドカード参戦でも、表彰台が当たり前だった1980年代から90年代を知るファンにとっては残念な結果が続いています。
来季モト2に「ストップ&ゴーレーシングチーム」からフル参戦する長島
来季モト2に「ストップ&ゴーレーシングチーム」からフル参戦する長島
 全日本にもワークスチームがあり、WGPと変わらないレギュレーションで戦いが行われていた頃は、コースやマシンを知り尽くしている日本人が優位と言われ、トップ争いをすることが当然のように思っていました。ですが、ワークスチームが姿を消し、レギュレーションの変化から、全日本勢はWGPのマシンとは別物のマシンで戦わなければならなくなります。さらにモト2になり共通ホンダエンジン仕様となってからは、他メーカーを駆るライダーは参戦が難しくなりました。モト3も同様で、ワイルドカード参戦組は、レースウィークに渡されるエンジン、パーツを組み込み戦います。連戦してマシンもライダーも戦闘態勢が出来上がり、タイトル争いをしているレギュラーライダーに挑むことは至難の技となっています。

 日本人ライダーのレベルが本当に落ちているのか? 才能もスキルも変わらないが、条件の違いが大きなハンデとなっているのか? その疑問と取り組まなければと立ち上がったのが、チームカガヤマの加賀山就臣。「全日本のレベルを知ることで、課題が見える」と訴え、加賀山の意義に賛同した全日本JGPチームが一致団結し、浦本はメーカーの垣根を超えた参戦となりました。関口も「参戦することで自分の位置を知りたい」と言い、日本GPに挑みました。全日本で1、2を争うライダーが参戦した結果は、惨憺たるものでしたが、2人とも意外と晴れやかな顔で「環境の違いはあるけど、ライダーのレベルの違いです」と潔く声を揃えたのです。

 関口は「真剣勝負のレースを18戦こなすGPライダーと、5〜6戦しかない全日本ライダーとの差は大き過ぎる。テストでは鍛えられないものがある。せめて全日本も10戦にしてほしい」と語りました。浦本も「もっと走る機会を」と。加賀山も「これが全日本ライダーのリアルな現状。この結果を踏まえて、これからの全日本を真剣に考えていかなければ」と語っていました。

 そこには「今は勝負にならないが、鍛え方によっては勝負できるようになる」という思いが隠れている。事実、中上や尾野はトップ争いをするライダーへと成長していますし、CEV最終戦で念願の優勝を果たした長島は、ここではポイントを得る成長を見せました。「100の練習よりも1回の本番」という言葉は、どんな世界にも当てはまるよう。全日本も本番で切磋琢磨し、レベルを上げることが急務ではないのかと問題提起できたのなら、ワイルドカード参戦ライダーが懸命に挑んだ戦いは、大きな意味があったのではないでしょうか? 様々な問題があり、すぐにレース数を増やすことは出来ないのでしょうが、「世界へ」の思いは、いつの時代も変わらずに人を突き動かしている原動力、夢を見ることが出来る戦いの環境を整えることは、とても大事なことだと感じた日本GPだったのです。
「自分の位置を知りたい」とワイルドカード参戦を決めた関口
「自分の位置を知りたい」とワイルドカード参戦を決めた関口