“コカ・コーラ”鈴鹿8耐特別編(5)
アズラン・シャー・カマルザマンとアドバイザー藤原克昭(竹内英士撮影)
アズラン・シャー・カマルザマンとアドバイザー藤原克昭(竹内英士撮影)
 カワサキ“チームグリーン”は6月1日、“コカ・コーラ”鈴鹿8耐第40回記念大会の体制を発表しました。メンバーは全日本ロードレース選手権JSB1000クラスのエースライダー渡辺一馬、イギリススーパーバイク選手権(BSB)のレオン・ハスラム、そして、アジアロードレース選手権(ARRC)のアズラン・シャー・カマルザマンのラインナップです。

 昨年の鈴鹿8耐は、柳川明/渡辺一樹/レオン・ハスラムで参戦、優勝したヤマハと同一周回の2位に入って表彰台を獲得、2000年以来16年ぶりの快挙でした。その原動力となった柳川は今年、チーム阪神ライディングスクールから、渡辺一樹もTEAM JP,DFR&RS−ITOHからの鈴鹿8耐参戦を発表しています。

 釈迦堂利郎監督は「柳川は後進に道を譲り、渡辺はスーパースポーツ世界選手権に専念してもらいたいと、当初からラインナップには入っていませんでした。代わりの候補として、スーパーバイク世界選手権のジョナサン・レイやトム・サイクス、世界耐久選手権のカワサキチームは24時間レースのみの参戦なので、ランディ・ドプニエもいいのではないかという声もありました。世界中のカワサキライダーの名前が挙がったのですが、最終的にはアジア圏のファンにアピールしたいということで、アズランに来てもらうことになりました」と語ります。
アズラン・シャー・カマルザマンの走り(竹内英士撮影)
アズラン・シャー・カマルザマンの走り(竹内英士撮影)
 アズランはマレーシア人。名前に“シャー”が入っていることから、かなり由緒正しき家の出身のようです。紳士的でフレンドリーなアズランは、日本でも知られたライダーであり、ロードレース世界選手権への参戦を果たしたアジアのスターライダーです。

 アズランがバイクに出会ったのは、友人達とバイクで遊ぶようになったことがきっかけ。2003年からレース開始。08年からはアジアロードレース選手権(ARRC)で活躍、2011年には鈴鹿4時間耐久参戦、そこで初の海外ライダーの優勝者となります。翌12年もARRCに参戦しながら鈴鹿8耐に初出場。13年ARRCでチャンピオンを獲得。鈴鹿8耐で6位入賞と躍進します。この年、ロードレース世界選手権モト2クラスに後半戦から参戦。そこから、15年までモト2で戦いました。

 昨年からはARRCに復帰。今年は第2戦タイでダブルウィンを飾り、ランキングトップに浮上、絶好調で第3戦鈴鹿にやってきました。ですが、予選でトップタイムを更新中に転倒、右手に酷い擦過傷を負ってしまいます。決勝参戦も危ぶまれましたが、アドバイザー藤原克昭が密着性の高いゴム手袋、新しいグローブを準備、それを身に付けることで、決勝参戦にこぎつけました。

 レース1、アズランは驚異的な集中力でトップ争いを繰り広げ、結果4位。藤原は「走り終えた後にグローブを外したら鮮血がボタボタと流れ落ちた。見ている方が卒倒しそうな怪我、あの右手でアクセルを開け、クラッチを握り、最後まで走りきったなんて信じられない。この4位は、ものすごく価値がある」と賞賛する走りを見せてくれました。レース2は10位で終え、ランキングトップを死守しました。

 アズランは「ケガをしっかり治して、鈴鹿8耐参戦に向けてはテストを重ねて挑みたい」と笑顔を見せてくれました。藤原は鈴鹿8耐でもアドバイザーとして参加します。藤原は「ハスラムの実力は昨年の8耐、全日本最終戦のスポット参戦で証明済。一馬も調子を上げている。アズランはアジアでタイトルを争ったこともあるライバルだったから、彼の力は誰よりも知っている」と期待を寄せます。年々上がるARRCのレベルを考えると、アズランが強力な秘密兵器になる可能性は大きい。

 アズラン起用は、カワサキにとっても大事な選択、釈迦堂監督は「今年に入ってから、アズランにはテストに参加してもらい、力を測ってきた。そこで、一馬の1秒から1秒半落ちのタイムを難なく記録してくれているので、きちんと詰めていけば遜色のない走りをしてくれると思う」と確信したようです。カワサキは、鈴鹿8耐勝利に向けて、動き出しているのだなと確信したのでした。