“コカ・コーラ”鈴鹿8耐特別編(7)
ルマン24時間レースで(佐藤洋美撮影)
ルマン24時間レースで(佐藤洋美撮影)
 昨年からワールドスーパースポーツ600(WSS)にフル参戦している大久保光(ホンダ)は、5歳のときにポケバイイベントのゲストとして“スプライト”鈴鹿8時間耐久レース(鈴鹿8耐)を訪れ、参戦していたウルトラマンレーシングの活躍に心を奪われ、「いつか8耐に出るライダーになる」と子供心に誓いました。大久保は、その願いを叶え、昨年鈴鹿8耐に参戦しました。チームメートの秋吉耕佑、ダミアン・カドリンとレースに挑み、初参戦で10位を獲得しています。そして今年は「いつか走ってみたい」と願っていた、世界耐久選手権(EWC)「ルマン24時間耐久レース」にも参戦を果たしたのです。

 それも、フランスの名門チーム「ナショナルモトス」から声をかけられたのです。ステファン・アダジュ監督は「WSSの人気ライダーであり、注目度の高い大久保に加わってほしいと思った」と言います。
ルマン24時間レースで(写真=佐藤洋美)
ルマン24時間レースで(写真=佐藤洋美)
 昨年、大久保のWSSランキングは21位、今季は第2戦タイで自己ベストとなる6位入賞、第5戦イタリア、第6戦イギリスとも9位とトップ10に入る活躍を示しています。レースを重ねる度に自分なりの課題を見つけて、それに取り組み、速さを磨いています。さらにトークショーでも存在感を示し、「ピコ太郎」の真似をして拍手喝采を浴びるなど、相変わらずのエンターテイナーぶりも発揮しています。

 大久保は「WSSのライダーがEWCに参戦することは珍しいことではなく、ヨーロッパでは、メーカーの枠も関係なく、WSSはヤマハだけど、EWCはカワサキと、いろいろなバイクに乗ってレース参戦するのも普通のようです。ナショナルモトスさんからは、チームメートを通して声をかけてもらいました。いつか走ってみたいと思っていたので、支援してもらっている人に相談して、走ることを決めました」と言います。
ルマン24時間レースで(写真=David・reygondeau)
ルマン24時間レースで(写真=David・reygondeau)
 大久保は、チームとの交渉やレース装備の準備を自ら行い、事前テストでチームと合流しました。ですが、英語を話すスタッフは数名、フランス語が飛び交う中、初参戦のルマン24時間耐久に備えました。

 「僕の英語もまだまだなので、どうなる?って、不安になることもありましたが、プライベートチームだけど、上位に進出する力がある、日本で言ったら桜井ホンダさんのようなホンダの販売店のチームです。監督とチーフメカニックとコックさん以外はボランティアで、みんな一生懸命で、タイムを出すとものすごく喜んでくれる、コックさんもごはんとみそ汁も作れるぞ、好きなものを言えと言ってくれました。居心地のいいチームでした」
ルマン24時間レースで(写真=佐藤洋美)
ルマン24時間レースで(写真=佐藤洋美)
 たしかに、大久保がタイムを上げてピットに戻ると、スタッフは拍手で迎えていました。大きなホスピタリティがあり、マッサージのスタッフやライダーをケアする準備はしっかりと整っています。24時間中、スタッフはずっとライダーたちの走りを見守りました。

 大久保は、ルマン24時間耐久の金曜日の走行で、前のマシンが急な進路変更をしたことで転倒します。1枚しかないツナギを傷つけてしまい、自分で修復、マジックでスポンサーの名前を生真面目に入れました。セッティングの変更では、メカニックとちょっと、口論もしました。
ルマン24時間レースで(写真=佐藤洋美)
ルマン24時間レースで(写真=佐藤洋美)
 そして迎えた決勝。チームメートが転倒して大きく順位を落とし、順位を挽回したと思ったら、次はトラブル発生、それでまた順位が沈み、また追い上げて、バトルをして…。そうやって自分のパートをしっかりと走り切り、24時間戦って22位。目標の「完走」を果たしました。

 大久保は「想像以上に大変だったけど、やっぱり楽しかった。自分はバイクが好きでレースが好きなんだと再確認できたような気がします。また挑戦したい」と語っていました。ステファン監督は「24時間耐久はフランス人のバイク乗りにとってお祭り。みんなが楽しみにしている。だから大変なこともあるけど、こうやって毎年、ここに来るんだ。大久保はよくやってくれた。参加してくれて感謝している」と大久保の健闘を讃えました。

 大久保は「今年も鈴鹿8耐に参戦したい」と願っています。発表はまだですが、24時間耐久レースを戦い抜き、たくましさを増した大久保の走りを鈴鹿で見ることが出来そうです。