“コカ・コーラ”鈴鹿8耐特別編(8)
EWC第2戦ルマン24時間耐久レースで(写真=佐藤洋美)
EWC第2戦ルマン24時間耐久レースで(写真=佐藤洋美)
 6月11日、全日本ロードレース選手権第4戦ツインリンクもてぎで開催されたJSB1000クラスで、野左根航汰(ヤマハ)が初優勝を飾りました。トップに立っていた前年王者の中須賀克行(ヤマハ)が最終ラップで周回遅れと接触し転倒、代わりにトップに立った野左根がそのままチェッカーを切りました。野左根は複雑な表情でしたが、2位にホンダのエースライダー高橋巧、3位にヨシムラスズキの津田拓也を従えて、ヤマハに勝利をもたらしました。
EWC第2戦ルマン24時間耐久レース(David・reygondeau)
EWC第2戦ルマン24時間耐久レース(David・reygondeau)
 今回の勝利の秘密は、今季から世界耐久選手権(EWC)にレギュラー参戦したことにもあるようです。野左根は、全日本第4戦もてぎのレースウィーク、フリー走行でトップタイムを記録した直後に「EWCにも参戦していることで、全日本参戦ライダーの中で誰よりもバイクに乗っている時間が長いと思います。バイクに乗り込めていることが、調子が上向いている理由だと思います。これまで全日本では、事前テストの段階で、中須賀さんや高橋さん、津田さんといった先輩ライダーにタイムが届かず、出遅れいる感じがありました。ですが、もてぎのテストでは一緒のスタートラインに立って走り出すことが出来ました。もてぎは過去のレースを見ても結果が残っていて、得意なコース。優勝を狙って行きたい」と語っていました。

 実際、ノックアウト方式で行われた予選で、中須賀と一騎打ちのアタック合戦を見せ、2番手。その走りは力強く、誰の目にも野左根の成長を感じさせるものでした。決勝でも中須賀を追い詰める場面もありました。レース終盤は、中須賀が王者の貫録を示すような独走体制となり、野左根は力の差を見せつけられることになるのですが、それでも、存在感はこれまでとはまったく違うものでした。
EWC第2戦ルマン24時間耐久レース(写真=佐藤洋美)
EWC第2戦ルマン24時間耐久レース(写真=佐藤洋美)
 今季、野左根は4月に開催されたEWC第2戦ルマン24時間耐久レースに「YART Yamaha Official EWC Team」(YART)からブロック・パークスとマービン・フリッツと挑みました。この時、ヤマハのモトGPチームの監督として活躍していた中島雅彦氏が同行していて「若手を育てるためにモトGPに連れて行っても、自信を無くすだけ。だがEWCは、手の届くレベルにトップ争いがあり、そこを目指すことで鍛えられる」と語っていました。ヤマハは、野左根をしっかりと育てようと考えているのだと感じました。そして、その思いに応え、野左根は精一杯の戦いを繰り広げ、初挑戦で2位を獲得するのです。

 スタートライダーのパークスが首位に立ち、第2ライダーのフリッツがその差を広げて、野左根にライダー交代、初参戦の中、トップでバトンを受け取ってコースに出ていかなければなりませんでした。野左根は「いつも緊張はしない方ですが、さすがにドキドキしました」と語っていました。そして1番のハイライトは、ラスト4時間のトップ争い。精神的にも体力的にもピークを過ぎ、気力を総動員して走り続けなければならない時間帯、それでもバトルを繰り広げる野左根の強さに、75,000人の観客が完全にノックアウトされ、新たなヒーローの予感を感じたように思います。最終的には2番手となりライダー交代、悔しさを抱えます。結果もそのまま2位。初挑戦2位の快挙にも関わらず「今までで1番悔しい表彰台だ」と顔を歪めました。
EWC第2戦ルマン24時間耐久レース表彰台(写真=佐藤洋美)
EWC第2戦ルマン24時間耐久レース表彰台(写真=佐藤洋美)
 レース後、野左根は「モトGPテストもさせてもらい、全日本にも参戦している。バイクに乗ることがトレーニングだと思っていて、体力的には大丈夫だと思っていたんですが、最後の2スティングくらいからキツイと感じました。ほとんど寝ることはなく、決勝も予選と同等のペースで攻め続けなければならない、想像以上に過酷なレースでした。ここを戦うために、いろいろな意味で鍛え直さなければと思いました」と語り、実際にその後トレーニングも見直し始め、最近では顔つきも体つきも変わりました。

 リベンジを誓ったEWC第3戦オーシャスレーベンも残念ながら2位となり、第4戦スロバキアは、全日本第5戦オートポリスと重なり、野左根の代役にマイケル・ファンデル・マークが参戦。野左根はEWCに参戦し「今度こそ優勝を」と狙います。
EWC第2戦ルマン24時間耐久レース記者会見(佐藤洋美撮影)
EWC第2戦ルマン24時間耐久レース記者会見(佐藤洋美撮影)
 そして、その戦いが終わればEWC最終戦“コカ・コーラ”鈴鹿8耐を残すのみ。野左根は昨年、同チームから参戦して4位。今年は鈴鹿8耐優勝候補として参戦します。EWCタイトルも諦めてはいません。野左根は、ワークスライダーとして勝つことを求められる厳しい環境の中で鍛えられ、その重責に恥じない走りを誓っています。鈴鹿8耐でどんな変貌を遂げるのか、楽しみです。野左根の躍進がライバルを刺激し、これまでにない鈴鹿8耐の戦いにしてくれるはず、新たなヒーロー誕生の予感がしています。