“コカ・コーラ”鈴鹿8耐特別編(9)
2008年鈴鹿8耐、伊藤真一の走り(鈴鹿サーキット提供)
2008年鈴鹿8耐、伊藤真一の走り(鈴鹿サーキット提供)
 「2016−2017 FIM世界耐久選手権最終戦 “コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第40回記念大会」(7月30日決勝)に向けての合同テスト日程が、7月5日(水)〜6日(木)、11日(火)〜13日(木)と決まりました。合同テスト期間中、鈴鹿サーキットでは、鈴鹿8耐前売り観戦券を提示すると、入場無料でパドックやピットビルのテラス席等が無料開放されるそうです。また、ライブタイミングアプリ「RACE NOW!!」を使うとタイムを見ることができ、鈴鹿8耐に向けて準備する各チームの仕上がりがチェックできます。詳細は鈴鹿のサイトで確認して下さい。
2008年鈴鹿8耐表彰台のようす(鈴鹿サーキット提供)
2008年鈴鹿8耐表彰台のようす(鈴鹿サーキット提供)
 テストの話題が出てくると、いよいよ鈴鹿8耐が近くなってきたと実感するのですが、今回のお話は2008年へとタイムスリップ。今年の優勝候補たちの当時の走りを振り返ります。

 この頃はライダー2人で走るのが主流で、第3ライダーは補欠という意味合いが強く、実戦を走ることはほとんどありませんでした。ですが、この枠で才能を発揮し、翌年正ライダーに昇格することもあり、若手ライダーにとってはチャンスを掴む場所でもありました。
2008年鈴鹿8耐、当時の清成龍一(鈴鹿サーキット提供)
2008年鈴鹿8耐、当時の清成龍一(鈴鹿サーキット提供)
 鈴鹿8耐で圧倒的強さを誇っていたホンダは、2005年までワークスチームが10連覇していたのですが、2006年はサテライトチームであるTSR、2007年はヨシムラスズキが優勝を飾ります。2008年、王者奪還を目指すホンダは、フルモデルチェンジしたCBR1000RRを投入します。ホンダのエースナンバー11を付けたのは清成龍一/カルロス・チェカ。今では若手ライダーをまとめてトレーニングチームを主催し、指導者としての才能も発揮する清成ですが、この当時はチェカが清成をリードする兄のよう存在で、ふたりは当時のスーパーバイク選手権(WSB)コンビとしてそのまま参戦します。

 そして、燦々と輝くという意味を持つゼッケン33を駆ったのは、2007年イギリススーパーバイク選手権で清成のチームメイトだったジョナサン・レイ。現在はWSBのカワサキ・エースライダーとして活躍していますが、この時はスーパースポーツ世界選手権(WSS)に参戦しており、「清成をものすごく尊敬している」と言うほど、清成を頼りにしているルーキーでした。ペアライダーには、ロードレース世界選手権(WGP)250に参戦していた高橋裕紀が駆けつけます。サテライトチームのTSRから伊藤真一/辻村猛。ハルクから小西良輝と、第3ライダー登録で全日本ロードレース選手権250に参戦していた高橋巧が参戦。高橋は「走ることになるとは思わなかった」と戸惑いながらも、急遽決まった代役として、初めての8耐に挑みました。桜井ホンダから亀谷長純/レオン・ハスラムが参戦しています。

 対するヤマハは、エースライダーへと成長した中須賀克行と佐藤裕児を起用。中須賀は全日本ロード開幕2連勝を飾り、初のタイトル獲得を期待されるライダーとなっていました。佐藤はJSB1000参戦1年目での大舞台への挑戦でした。前年王者ヨシムラは加賀山就臣/秋吉耕祐が2連覇を狙っていました。
2008年鈴鹿8耐、当時の中須賀克行(鈴鹿サーキット提供)
2008年鈴鹿8耐、当時の中須賀克行(鈴鹿サーキット提供)
 決勝の10番目までのグリッドを決めるトップ10トライアルでは、見事ポールポジション(PP)を獲得したのはTSR伊藤でした。2分7秒014を記録し、鈴鹿8耐7回目、歴代最多となるこのPP獲得記録は、未だに破られてはいません。

 いよいよ決勝レース、ルマン式スタートでレースがスタートします。主導権を握ったのは清成/チェカ組でした。清成はバッグマーカーを交わしながらもハイペースを崩すことなく、圧巻の速さを示します。走行を重ねる毎に速さに磨きがかかり、マシンを操る楽しさが伝わるようなライディング。私のなかで、清成が8耐を走っているシーンで最も印象に残っています。途中スコールが落ちる波乱の中、チェカは冷静に状況を判断し、チームからのピットインの指示には従わず、スリックタイヤのまま走行。その決断のおかげで、首位は強固なものになりました。攻める清成に抑えの効いたチェカの安定したライディングと抜群のコンビネーションで、圧倒的勝利を飾り、ホンダに勝利奪還をもたらしたのです。

 2位にはもうひとつのヨシムラチーム、酒井大作/渡辺篤がトップと同一周回で入り、3位にはハルク小西/高橋巧が入ります。高橋は大排気量も操れる才能を示し、2009年からはJSB1000へとスイッチすることになります。4位のヨシムラは、加賀山が1度、秋吉は2度転倒。予定外のピットインが1度というハンデを跳ね返す怒涛の追い上げで、4位に入る離れ業を見せます。5位にヤマハ中須賀/佐藤が入りました。中須賀は上位チームに負けないアベレージを示し、ヤマハの信頼を勝ち得たように思います。TSR伊藤は転倒してしまいリタイア。高橋裕紀もレイもそれぞれ転倒してリタイア。桜井ホンダの亀谷/ハスラムは9位でした。
2008年鈴鹿8耐、当時の伊藤真一(鈴鹿サーキット提供)
2008年鈴鹿8耐、当時の伊藤真一(鈴鹿サーキット提供)
 あれから9年の月日が流れ、ホンダは鈴鹿8耐勝利奪還を狙い、CBR1000RRSP2とモデルチェンジしました。高橋巧はホンダのエースライダーに成長し、2015年、16年とヤマハに奪われた勝利を取り戻そうとしています。中須賀は全日本ロードで圧倒的な王者となり、前人未到の鈴鹿8耐3連覇に挑みます。清成は高橋裕紀とペアを組み、9年振りに鈴鹿8耐復帰するモリワキから参戦。ハスラムは昨年カワサキから参戦して鈴鹿8耐2位となり、今季は優勝候補としての参戦です。伊藤は3年振りに鈴鹿8耐復帰、8年振りに全日本復帰して鈴鹿8耐の準備を進めています。速さを磨き、キャリアを重ねたライダーたちは、あの時以上に魅力を増して熾烈な戦いを繰り広げてくれるはずです。テストから観戦することができたら、深い8耐の魅力を味わえるはずですよ。
2008年鈴鹿8耐、当時の高橋裕紀(鈴鹿サーキット提供)
2008年鈴鹿8耐、当時の高橋裕紀(鈴鹿サーキット提供)