“コカ・コーラ”鈴鹿8耐特別編(12)
ルマン24時間耐久で勝利を喜ぶGMT94(EWC提供)
ルマン24時間耐久で勝利を喜ぶGMT94(EWC提供)
 今季から“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース(7月30日決勝)は世界耐久選手権(EWC)最終戦に位置つけられ、タイトル決定戦となります。開幕戦は昨年9月に行われたボルドール24時間耐久、今年4月のルマン24時間耐久、5月のドイツ8時間耐久、そして6月のソロバキア8時間耐久を終えて、いよいよ、鈴鹿8耐で最終戦を迎えます。
GMT94のD・チェカ(EWC提供)
GMT94のD・チェカ(EWC提供)
 EWC参戦チーム 「GMT94 YAMAHA Official EWC Team」(GMT94)は、その差1ポイントで、ランキングトップの「SUZUKI ENDURANCE REACING TEAM」(SERT)を追いかけています。GMT94は、クリストフ・グィオがオーナー監督を務め、フランス・パリを拠点に1990年代から活動しています。グィオ監督は年輪を重ねたベテラン監督が多いEWCの中では若手ですが、2004年、2014年とEWCタイトルを獲得したトップチームです。

 通常の選手権は、チャンピオンの称号はライダーに与えられるものですが、EWCは、チームがタイトルを得るのです。極端ですが、全レース、違うライダーのラインナップで戦ったとしても、チームは世界タイトルを得ることが出来るのです。ライダー個人の能力よりも、チームの力量、監督の采配に対しての評価が高い戦いです。
ですが、グィオ監督は2014年に世界タイトルを獲得した年末に行われたモータースポーツの功労者を讃えるガラパーティに招待された時、監督のみの出席だったのを、主催者にお願いしてライダー枠を作ってもらい、一緒に壇上に上がりました。

 グィオ監督は「ライダーの頑張りがなければ、世界一にはなれない。称賛されるべきはライダーだ。EWCはライダーの変更には寛容だが、私は、できれば自分が信頼したライダーを変えずに戦いたい」と言います。
ドイツ・オーシャスレーベン表彰台で(EWC提供)
ドイツ・オーシャスレーベン表彰台で(EWC提供)
 昨年、EWCは翌2016−17年シーズンから鈴鹿8耐と最終戦にするという大改革があり、2015−16シーズンのタイトル決定戦が8月26日〜27日に開催されたドイツ8時間に変更され、GMT94はこのレースで優勝を飾りますが、総合タイトルでは1ポイント差でランキング2位となります。あと一戦あったなら、逆転チャンピオンの可能性も増したはず。グィオ監督もさぞ落胆しているだろうと声をかけると「シーズンを考えると、トラブルやアクシデントもあり、あそこまで戦えたということに感謝している。スケジュールの変更は、戦うチーム全てが共有していることだし、これでEWCの注目が上がるのであれば、それも歓迎している」との返答。紳士的でグィオ監督らしいと思いました。
 そして今シーズン開幕戦、第80回を迎えたボルドール24時間耐久が始まりました。GMT94は、3番手走行中に転倒が続き一時40番手までダウン。そこから怒涛の追い上げで9位まで挽回しフィニッシュ。

 第2戦ルマン24時間耐久では、レースの最中にライダーのN・カネパが発熱でダウン、午前9時以降の残り7時間はD・チェカ、M・ディ・メリオのふたりで戦い続けることに。それでも新記録となる860周を走破し、優勝を飾りました。ここからGMT94の快進撃が始まります。

 第3戦ドイツ・オーシャスレーベンの戦いでは、給油中にライトが点灯していたことでストップ&ゴーペナルティを受けますが、それでも強さを示し連勝、ランキング2位に浮上します。第4戦スロバキア大会は、YART Yamaha Official EWC Team(YART)とトップ争いのバトルを展開。残り2時間、YARTがトラブルで後退するとGMT94は圧勝して3連勝、1ポイント差のランキング2位で、最終戦鈴鹿8耐を迎えることになりました。
 グィオ監督は 「鈴鹿8耐は特別のレースだ。日本のワークスチームが参戦し、世界中から速いライダーがやってくる。そこでトップ争いをするなんて至難の技だ。だから、これまでの戦いの中で、2012年に鈴鹿で3位となり表彰台に登れたことは忘れられない。信じられないくらいの喜びだった」と語ります。

 2012年鈴鹿8耐で3位争いのバトルを繰り広げたのはトリックスターレーシングチーム。レース後、グィオ監督はトリックスター監督の鶴田竜二に宛てて送った手紙で、「あなたたちのバトルがあったから、僕たちは、あの表彰台の登れた」と感謝の気持ちを示しました。この手紙がきっかけで、トリックスターレーシングチームはEWCに赴くのです。今もふたりの親交は深く、EWCではライバルであり、お互いを高め合う仲でもあります。

 それほど感慨深く思い出の残る鈴鹿8耐へ、GMT94がタイトル争いにやって来ます。SEAT、YARTとのEWCチャンピオン争いが、鈴鹿8耐を舞台にぶつかり合います。この争いに鈴鹿8耐優勝候補チームが絡み合い、予想のつかない戦いが繰り広げられようとしています。