“コカ・コーラ”鈴鹿8耐特別編(13)
“コカ・コーラ”鈴鹿8耐3連覇を狙うヤマハ中須賀克行(モビリティランド提供)
“コカ・コーラ”鈴鹿8耐3連覇を狙うヤマハ中須賀克行(モビリティランド提供)
 2016−2017FIM世界耐久選手権最終戦“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第40回記念大会(7月30日決勝)に向けて、3連覇を狙うヤマハの中須賀克行は「レコードを更新し、チーム一丸となって、勝利を目指す」と力強く誓っています。

 鈴鹿8耐は、ユーロスポーツ(欧州のスポーツチャンネル)で中継されるようになり、アジア、ヨーロッパでも人気が沸騰。鈴鹿8耐は、日本最大のバイクイベントと呼ばれていましたが、ワールドワイドに大会の価値が上がっています。その人気を支えているのが、鈴鹿8耐にヤマハワークスが復活したこと。王者・中須賀がチームを引っ張り、モトGPライダーやワールドスーパーバイク(WSB)のライダーをまとめ、2連勝を飾ってきました。ただ、今年は大丈夫だろうか?と不安の声が、上がっていました。

 全日本ロードレース選手権最高峰クラスJSB1000で5連覇、7度ものタイトルを獲得してきた無敵の中須賀が、今年の全日本ロード開幕戦鈴鹿決勝で転倒を喫します。この時は「弘法も筆の誤り」のことわざのように、王者にもつまずきがあるのだなと思っていたのが、第2戦のSUGOで、予選でも決勝でも転倒してしまい、これは深刻な事態に陥っているのではないかと思われるようになるのです。
2017全日本ロードレース選手権第3戦もてぎでの中須賀克行の走り(モビリティランド提供)
2017全日本ロードレース選手権第3戦もてぎでの中須賀克行の走り(モビリティランド提供)
 中須賀を知る関係者は「今季からタイヤのホイールサイズが16.5インチから17インチへと変更されたことで、その感覚を掴みきれないことが不調の原因。高橋も津田も新型マシンになったこと、渡辺はホンダからカワサキへの乗り換えで、全てのパッケージが新しくなったことで、ホイールサイズが変更されたことを敏感には感じてはいないようだが、中須賀はマシンの変更はなく、足回りのみの変更となったことで、戸惑いが大きい」と分析してくれました。

 モトGPテストもこなす中須賀にとって、全日本マシンに乗り込む時間は、決して多くはない。感覚が掴めるまで時間がかかるのかも知れないと思われていました。300kmのハイスピードを超える極限の戦いの中での違和感は、大きなことのはずです。
2017全日本ロードレース選手権第4戦オートポリスでの中須賀克行の走り(MFJ提供)
2017全日本ロードレース選手権第4戦オートポリスでの中須賀克行の走り(MFJ提供)
 それでも第3戦・もてぎでは、終盤まで王者らしいレースを展開。ポールポジションを獲得し、決勝も独走体制を築いて勝利目前まで迫ります。ですが、最終ラップに周回遅れのライダーがV字コーナーでインを開け、中須賀が空いたスペースに入ろうとしたとき、そのライダーがラインを塞ぐように戻ってきたことで、接触し転倒してしまいました。周回遅れのライダーも故意にラインを塞いだわけではなく、2台のタイミングが運悪く重なってしまったことによる接触でしたが、中須賀はここでも不本意な結果に終わったのです。
全日本ロード第4戦でようやく今季初優勝、8耐前に王者・中須賀復活を印象づけた(MFJ提供)
全日本ロード第4戦でようやく今季初優勝、8耐前に王者・中須賀復活を印象づけた(MFJ提供)
 そして迎えた第4戦オートポリスでは、雨、風、霧で何度もスケジュールが変更され、予選は雨、中須賀は13番手と下位に沈みます。ですが、決勝では追い上げを見せ、優勝を飾るのです。肩を震わせて泣く中須賀から、ここまでの辛さが伝わって来ました。2年振り開催となったオートポリスはどんよりとした曇り空での決勝でしたが、表彰台での中須賀の晴れやかな笑顔に、サーキットに集まった全ての人が心からの祝福を送り、雨雲を押しやり、空が明るくなったような気がしたほどです。

 中須賀は「実はもてぎでの転倒で身体も完調ではなく、事前テストもキャンセルしていたので、勝てるとは思っていなかった。ずっと、勝ちたかった。勝利に飢えていた。もてぎで勝てずに、勝つことの難しさを痛感した。スタッフは『実力があるんだから落ち着け』と声をかけてくれた。支えてくれる皆の気持ちに応えたい、皆の喜ぶ顔が見たいと思って走り切った。やっと勝てたと思ったら、泣けて仕方がなかった。何度も勝っているのに、優勝することが新鮮に感じられた。本当に辛かった。もうダメなんじゃないかとも思った。でも、その気持ちを乗り越えることが出来て、また、成長出来たんじゃないかとも思う。ここで勝てたことは、8耐に向けて、とても大きい。ここで勝てなかったら、8耐にまで、嫌な流れを引きずっていたかも知れない。これで、気持ち良く8耐に向える」と語りました。
 オートポリスには、鈴鹿8耐でチームメイトとなるマイケル・ファンデル・マークが参戦しており、中須賀セッティングのマシンで2番手を走行中に転倒、再スタートで14番手という結果でしたが「中須賀のマシンに違和感なく乗れた」とすでに鈴鹿8耐に向けての戦いをスタートさせています。

 チームメイトとなるWSBのマイケルもアレックス・ローズも、中須賀セッティングのマシンに合わせて挑むのです。中須賀セッティングで速く走ることが、彼らに求められていることです。中須賀への絶大なる信頼があってこそですが、そこが強さの秘密です。みんなが乗りやすいマシンなんて夢物語です。王者・中須賀が輝くことを、1番に考えるヤマハが、今年も優勝候補の筆頭です。