“コカ・コーラ”鈴鹿8耐特別編(15)
全日本ロードJGP2クラス優勝を飾った第4戦もてぎで(赤松孝撮影)
全日本ロードJGP2クラス優勝を飾った第4戦もてぎで(赤松孝撮影)
 “コカ・コーラ”鈴鹿8耐第40回記念大会(7月30日決勝)に、全日本ロード選手権JGP2の生形秀之が参戦すると聞いて「今年はどのチームに呼ばれたのかな」と思いました。生形は過去8回も鈴鹿8耐に参戦しており、スズキ系チームの助っ人ライダーとして、その確実な走りを活かしてきました。でも、今回は自らチームを立ち上げ、鈴鹿8耐への本格参戦を計画しているというではないですか!なんと無謀なことを始めたのだろうかと思いつつ、ついに新たな舞台に進みはじめたのだなとも感じました。確実な歩みで勝利へと向かう生形なら、その無謀な挑戦も成し遂げるのだろうと思ったからです。
全日本ロードJGP2クラス優勝を飾った第4戦もてぎで(赤松孝撮影)
全日本ロードJGP2クラス優勝を飾った第4戦もてぎで(赤松孝撮影)
 生形は1999年から全日本ロードに参戦、2005年より地元静岡市清水区のJリーグチーム「清水エスパルス」とタイアップし、“夢”・“挑戦”をキーワードとしたレーシングチーム、「S−PULSE DREAM RACING(エスパルスドリームレーシング)」を立ち上げ、チームオーナー兼ライダーとして様々な活動を行ってきました。全日本ロード参戦を続けるだけでも多くの労力が必要で、戦い続けることは簡単ではありません。トップライダーとして最前線で戦いを繰り広げている生形への評価は高いものがあります。

 そんな中で、鈴鹿8耐参戦チームを再編し構築するというプロジェクトに挑むのは、自ら新たな苦労を買って出たようなもの。スタッフの増強、ライダー探し、資金集めなど、ベース作りから組織していくことは、言葉では言い尽くせない困難が待ち受けているのです。それでも生形は、それを承知で、今回のプロジェクトに着手したのです。40歳を迎え、ベテランと呼ばれることの多くなった生形の、新たな挑戦です。
全日本ロード第4戦もてぎJGP2クラス表彰台(赤松孝撮影)
全日本ロード第4戦もてぎJGP2クラス表彰台(赤松孝撮影)
 「鈴鹿8耐に参戦してきたが、それは既存のチームに呼ばれてメンバーに加わるという形だった。求められることに応えるという参戦スタイルで、それはそれで、自分への挑戦という部分もあり、やりがいも感じていたし、チェッカーを受けた時の充実感はあった。でも、俺ならこうしたい、自分ならこうするだろうというアイディアが、たくさんあって、いつかそれを実行に移したい。ライダーとしても、自分のセットアップした方向のマシンで存分に戦ってみたいという思いが大きくなって行った」

 生形は、常に速さを求め、だからこその転倒や、トラブルもあり、その常に挑戦する姿が魅力のライダー。だから、勝利の瞬間の喜びは、大きいものがあり、今年の全日本ロード第4戦もてぎでの生形の勝利は、これまでの勝利同様、多くの人を感動させるものでした。そのトライする姿勢や諦めない力は、スズキも認めるところで、昨年からスズキとのテスト契約を結ぶまでになります。

 また、ヨシムラとのつながりから、ヨシムラの去年型マシンを借りることが可能になり、自らのチームでの鈴鹿8耐参戦の道筋が見え始めます。ですが、それでも、参戦を決めるには大きな決断が必要でした。

 「そろそろ、挑戦してもいいんじゃないかと背中を押してくれる人がいた。自分の心の奥の声が聞こえていたのかなと思うようなタイミングで、挑戦しようと声をかけてもらい、決断をしたら、多くの人が集まってくれたんだよね。自分が懸命に挑んできたこれまでのレース活動の中で出来た人脈が動き出して、鈴鹿8耐参戦という無理だと諦めていた夢が動き出した」
モト2ライダー、マーセル・シュロッターと鈴鹿8耐に参戦します(竹内英士撮影)
モト2ライダー、マーセル・シュロッターと鈴鹿8耐に参戦します(竹内英士撮影)
 全日本ロードJGP2に参戦しながら、鈴鹿8耐参戦チームであるエスパルスドリームレーシング・IAI(アイエイアイ)で今年4月の鈴鹿2&4、8耐トライアウトに参加。結果10位で走り切り、参戦権を獲得、鈴鹿8耐6位入賞の目標に向けて動き出します。ペアライダーは、その目標を達成するためにマーセル・シュロッターを招聘。シュロッターは、WGPのモト2クラスに参戦しているドイツ人です。シュロッターは「鈴鹿8耐参戦を願っていたので、今回の機会をもらえたことが嬉しい。チームの力になれるように挑みたい」と語ります。7月5、6日の鈴鹿8耐合同公開テスト1回目に合流、すぐにチームに溶け込み、最終日には2分10秒台までタイムアップする走りを見せました。
 生形は「これまでは、一人のライダーとして鈴鹿8耐に参戦してきて、まずは結果を出すこと、良いタイムや良い順位で走る事が使命の個人の戦いだった。今年はチームを率いるリーダーとして、ライダーとして、個人で挑戦していたステージを、より多くの方々と一緒に挑戦したい、夢をみたいと思い、鈴鹿8耐挑戦を決断しました。これから沢山の人達と夢を共有して達成していくことが新しいステージだと感じている」と新たな一歩を踏み出したのです。

 昨年のヨシムラマシンに生形とモト2ライダーの組み合わせは、かなりのポテンシャルを持っていそうです。目標の6位を超える力を発揮してくれるかも知れません。またひとつ、見逃せないチームが増えました。そして、資金集めが目的というよりも、多くの人にこの挑戦を知ってほしいという思いもあり、「8耐参戦プロジェクト」もスタートしているそうです。応援の形も参加の形もさまざまですが、鈴鹿8耐観戦の鉄則は、応援するチーム、ライダーを見つけること、その手助けに、こういったプロジェクトが役立つのかも知れません。