“コカ・コーラ”鈴鹿8耐特別編(16)
「チーム阪神ライディングスクール&柏南自動車教習所」から鈴鹿8耐に参戦する松崎克哉(竹内英士孝撮影)
「チーム阪神ライディングスクール&柏南自動車教習所」から鈴鹿8耐に参戦する松崎克哉(竹内英士孝撮影)
 15年振りに鈴鹿8耐参戦を決めた「チーム阪神ライディングスクール&柏南自動車教習所」は、先に西嶋修(46)と柳川明(45)の参戦を発表していましたが、第3ライダーは「サプライズがあるかも知れない」と有馬裕二監督は語っていました。その3人目のライダーに選ばれたのは松崎克哉(21)です。今季、全日本ロードレース選手権のチームグリーンのライダーは渡辺一馬と松崎克哉へと一新されました。本人が願ったわけではありませんが、松崎は、カワサキの顔というべき柳川明を押しやり、俊足を誇った渡辺一樹からその座を奪ったライダー。カワサキファンはどんなライダーだろう?と興味津々でした。

 カワサキチームグリーンの釈迦堂利郎監督は「渡辺一樹は、かねてからの希望通りに海外参戦(スーパースポーツ600に参戦中)、柳川は20年もカワサキの第一戦で走ってきてくれましたが、世代交代ということで、今年は世界耐久選手権への参戦経験もある経験豊富な渡辺一馬、そして、松崎克哉は育成枠で入ってもらいました。彼には焦らずに、じっくりと育ってほしい」と語っていました。カワサキの育成候補は、RS−ITOHでともに走った和田留佳や清末尚樹らもいて、そこから選ばれたのが松崎でした。
「チーム阪神ライディングスクール&柏南自動車教習所」集合写真(赤松孝撮影)
「チーム阪神ライディングスクール&柏南自動車教習所」集合写真(赤松孝撮影)
 松崎の父・清人さんは、ロードやオフロードを走るバイク乗りで、松崎は小学校5年生のときから父と一緒にバイクに乗り始めます。2014年に九州選手権ST600チャンピオンになり、翌年はランキング2位、2016年に全日本昇格します。松崎はST600に参戦し、同チームの和田や清水らと全日本ロードを転戦。合宿でもしているのかのようで、ピットはいつも賑やかで楽しそうでした。松崎はこの年ランキング6位を獲得して、今年カワサキのトップチームに招かれ、JSB1000参戦を開始します。

 松崎は「和田や清水とは、九州時代からの仲間です。ライバルでもあって、一緒に上を目指して走って来て、そこから自分が選ばれたんです。自分がしっかりしないと、後に続こうとしている彼らの道を塞ぐことになると思うので、そういった意味のプレッシャーはあります。でも、実力で選ばれたとは思っていないし、すぐに結果が出るような甘い世界じゃないこともわかっています」と謙虚に語っていました。
ピットでの松崎克哉(竹内英士孝撮影)
ピットでの松崎克哉(竹内英士孝撮影)
 オフに大先輩の柳川や西嶋とのトレーニングに参加したり、週1のトレーニングを週3に増やし、JSB1000のマシンを操る身体を作りました。開幕戦となった鈴鹿200kmでは5位、続く2戦目SUGO200マイルは8位と、雨となった長丁場のレースを走り切ります。3戦目もてぎ戦では、タイムアップの仕方や、走りでも関係者が「おぉ〜」と変化を感じるような走りを見せてくれました。結果は転倒再スタートで19位ではありましたが、手応えを感じたレースだったようです。続く第4戦目となった地元オートポリスで松崎は4位へと躍進し、トップライダーたちの中でバトルを展開、ライダーとしての存在感を示します。

 松崎には、柳川明という最高のアドバイザーがいて、柳川がいないときには藤原克昭がフォロー。一から丁寧な指導を受けています。「恵まれ過ぎ」だと突っ込みを入れたくなる環境で、成長中です。そして今年、鈴鹿8耐参戦のチャンスを掴みました。トレーニングを一緒にこなす先輩たちとのチームで「経験を積みたい」と松崎は挑むのです。
松崎のアドバイザーを務める柳川明(竹内英士孝撮影)
松崎のアドバイザーを務める柳川明(竹内英士孝撮影)
 たくさんのライダーを育ててきた有馬裕二監督は、「カワサキから大事なライダーを借りて挑むことになりました。松崎君と会った時からビビッと来るものがあって、ぜひ走ってほしいと思ったんですよ。速くなって行くライダーには、ビビッと感じるんです(笑)。ここでは伸び伸びと走ってもらいたい。まず胸を張れと言いました。堂々と走って、自分が持っている感性を磨け、間違っていてもいいから、感じたことをメカニックに伝えて言葉にしろ、表現力を養え、背負うものない、チームで伸び伸びと走れ、とアドバイスしました」

 そう言えば、180cmの長身の松崎ですが、ピットでもパドックでも、ちょっと背中を丸めている感じがしていました。借りて来た猫のようで、まだ自分の居場所が見つかっていない感じでした。有馬監督が「『胸を張って堂々としろ』と言ったんですよ」と話をしている横で、背筋を伸ばして胸を張る松崎がいて、なんとも微笑ましく「本当に良いチームで走ることが出来て良かったね」と声をかけると笑顔を見せてくれました。
「チーム阪神ライディングスクール&柏南自動車教習所」集合写真(赤松孝撮影)
「チーム阪神ライディングスクール&柏南自動車教習所」集合写真(赤松孝撮影)
 松崎は「子供の頃から、西嶋さんや柳川さんの速さや強さは知っていました。だから、すごいメンバーの中に入れさせてもらえたことは分かっています。まだまだですが、だいぶバイクのパワーにも慣れて来て、少しずつですが、前進できています。またここで勉強させてもらいます」と言います。

 良いライダーのまわりには、アドバイスする人がいっぱい集まってくるのです。本家のカワサキチームグリーンからの鈴鹿8参戦ではありませんが、松崎は、チーム阪神ライディングスクールで、未来のカワサキのエースライダーを目指して修業が出来るのは願ってもないこと。鈴鹿8耐参戦を終えたら、胸を張った堂々とした松崎に合うことが出来そうで楽しみです。