“コカ・コーラ”鈴鹿8耐特別編(19)
開幕戦ボルドール24時間耐久の表彰台、歓喜するトリックスターレーシング(佐藤洋美撮影)
開幕戦ボルドール24時間耐久の表彰台、歓喜するトリックスターレーシング(佐藤洋美撮影)
 2017年“コカ・コーラ”鈴鹿8耐(7月30日決勝)は、2016〜17年2輪世界耐久選手権(EWC)の最終戦として開催されます。鶴田竜二監督率いるトリックスターレーシングは今季、「世界一」を掲げてEWCフル参戦を開始しました。きっかけは、2012年鈴鹿8耐。レース終盤の暗闇の中、GMT94と3位表彰台を激しく争い、トリックスターレーシングはトラブルでリタイヤ、GMT94が表彰台に登りました。GMT94のクリストフ・グィオ監督は「今だって、あの表彰台に登れたことを奇跡のように感じている。8耐は、EWCにはいないワークスが力を入れているチームが大挙して参戦しているため、EWC組はポイントを取ることさえ厳しい戦いだ。それでもEWCタイトルのためには、1ポイントだって大事だから、僕たちは遠い日本にやって来る。その特別な大会で表彰台に上がれた。それはトリックスターレーシングと最後までバトルをして緊張感を保つことができたからだ。だから、とても感謝している」と語ります。

 その後、クリストフ監督からトリックスターレーシングの鶴田監督のもとに感謝の手紙が届きます。鶴田監督は「EWCの強さを学びたい」と、2013年ルマン24時間耐久に出かけます。スタッフもライダーも日本人で構成し、オールジャパンでの戦いは、EWCでは大歓迎で迎えられました。ですが、初めての挑戦は、給油口の径が違い、ピットワークに時間がかかってしまうなど、参戦しなければ分からない小さなミスが、トップ争いから置いていかれる原因となり、結果は9位完走。鶴田監督は「力を出せなかった」との苦い思いが残っていたのです。
井筒仁康の走り(EWC提供)
井筒仁康の走り(EWC提供)
 鶴田監督は、EWCにフル参戦して「世界一」を目指すという夢を抱き、そして今季のEWC大変革を受け、「フル参戦」を表明、夢を目標へと変えました。ルマン24時間に挑戦したトリックスターレーシングは、欧州でも認知されており、海外ライダーから売り込みがあるようになっていました。その中からエルワン・ニゴンを起用し、チームの一員に迎え入れます。エルワンは、ボルドール24時間、ルマン24時間でも優勝経験がある強靭なライダーです。

 迎えた今季の開幕戦ボルドール24時間耐久、エルワンはライダーとしてだけでなく、ガレージの準備や、現地スタッフの交渉などをこなし、トリックスターレーシングを支えました。ボルドール24時間に参戦した井筒仁康は「エルワンが準備してくれたことで、ルマンの時に比べたら、何事もスムーズにレースができる環境になった」と語りました。

 そして、エルワン、井筒、出口修の3人で参戦したボルドール24時間耐久で、3位表彰台の偉業を達成するのです。エルワンは「日本チームが、ここで表彰台に登ったのは初めてだ。フランス人はみんなびっくりしているよ。本当にすごいことなんだ」と語っていました。鶴田監督も「力を示せたことが嬉しい。表彰台も観客も、当たり前だが外国人で、自分が海外映画の主人公にでもなったような気分。これまでに味わったことのない感動だった」と語っていました。

 開幕戦優勝はSERTスズキ、2位にはSRCカワサキが入り、3位にトリックスターレーシング。フランス国旗と日の丸が、青い空をバックに揺れ、トリックスターレーシングの面々の笑顔が輝いていました。SEATの監督はドミニク・メリアン、過去15回もチャンピオンに輝いた名物監督。カワサキはジル・スタファ―監督で、こちらは24時間耐久のスペシャルチームで、SERTのライバル。こちらもEWCでは知らぬ者のいない監督です。そのふたりと並んだ鶴田監督は、世界1に向けて大きな一歩を記したのです。
トリックスターレーシングのエルワン・ニゴン(佐藤洋美撮影)
トリックスターレーシングのエルワン・ニゴン(佐藤洋美撮影)
 第2戦から第5戦までは、井筒のケガで、代役のジュリアン・ミレットが参戦しました。ミレットはすぐにチームに溶け込み、健闘しますが、エルワンや出口の転倒、トラブルが続き、トリックスターレーシングは結果を残すことができずに最終戦鈴鹿8耐を迎えます。井筒は帰ってきましたが、出口が第5戦ソロバキアで右肩脱臼、大事を取って欠場。代役としてグレゴリー・ルブランが加わりました。ルブランは2014年8耐で一緒に走ったライダーです。

 鶴田監督は「結果は残っていませんが、チームとしての成長は感じています。ボルドール24時間の3位は、たまたまでも、幸運でもなく、実力で勝ち取ったもの。他のラウンドもアクシデントさえなければ、確実に3位は狙えていました。その自信をもって、最終戦となった鈴鹿8耐に挑みます」と語ります。
開幕戦ボルドール24時間耐久の表彰台(佐藤洋美撮影)
開幕戦ボルドール24時間耐久の表彰台(佐藤洋美撮影)
 エルワンにしてもグレグリーにしても「トリックスターレーシングで走りたい」と言ってくれるのは、それだけチームの魅力があるということだと思います。エルワンは「ここのチームでは、一緒に戦っているという連帯感を強く感じる。ただレースに出ればいい、勝てばいいってことじゃない、チームの絆がモチベーションを上げてくれる」と言います。

 その絆を武器に、トリックスターレーシングは最後の戦いを最高の形で締め括ろうとしています。EWC参戦組として、その誇りを胸に、2012年にGMT94と暗闇のバトルを繰り広げたように最後まで諦めない走りを見せてくれるはずです。
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