WGP日本GP特別編(2)
 全日本ロードレース選手権JSB1000クラスでV5、通算7度のチャンピオンに輝いてきた王者・中須賀克行が、全日本ロード第7戦オートポリス、第8戦岡山国際で連勝を飾り、完全復活を果たしました。第8戦で見せた中須賀の強さは特筆すべきもので、7年連続のポールポジション獲得という結果にも表れています。

 全日本ロード開催サーキットの中でも苦手と答えるライダーが多い難所・岡山国際サーキットは、回り込むコーナーが多いことから、走りのリズムが作りにくく、セッティングも難しい。
 ただ、コースと観客席が近いことから、ライダーの走りをじっくりと見ることができます。近くで見る中須賀のコーナリングは芸術的のひと言。ピタリと路面を捉え、エンジンパワーを立ち上がりスピードへと生かし切る、迷いのない、ぶれない走りは、何度見ても唸るほどの素晴らしさなのです。中須賀も乗れている時は「タイヤが路面を捉える感覚がわかる」と語ります。

 中須賀は、今季からタイヤホイールサイズが16.5から17インチへと変更されたことで苦しんでいました。積み上げてきた自分の究極のライディングが、ホイールサイズ変更によりアジャストしなければならなくなったことで試行錯誤し、開幕戦鈴鹿、SUGOで2戦連続転倒。3戦目もてぎではトップを独走しながらラストラップで周回遅れが走行ラインを塞ぎ、転倒しています。4戦目のオートポリスで優勝を飾り、鈴鹿8時間耐久ロードレースでは、乗り慣れたホイールサイズ16.5インチで3連覇を飾りますが、全日本ロード5戦目のもてぎで、トップ独走中に転倒するのです。
 トップを走れる力があるのに、転倒してしまう。「何のインフォメーションもなく転倒していた」と、何故転倒してしまったのか、分析できないという闇は、中須賀にとって辛いものだったはずです。中須賀が転倒したふたつのもてぎで優勝を飾ったのはヤマハの後輩、野左根航汰でした。

 中須賀は、その闇から抜け出すように、6戦目のオートポリスを再び勝利で飾ります。このとき中須賀は「野左根は17インチでも違和感なく乗れているから、そこにヒントがあるはず。自分のいいところと野左根のいいところをチョイスできれば、これまで以上の走りができるはず」と、貪欲に理想の走りを模索します。そして、7戦目の岡山国際で優勝、「まだ完全とは言えないが、だいぶ進歩できた」と言います。ヤマハ陣営が用意した対策パーツが効力を発揮し、中須賀の走りが蘇ったようでした。17インチとなったことで、コンマ5秒から1秒はタイムが落ちると言われている中で、レコードへ迫る走りでPPを獲得、決勝では独走優勝を飾りました。
 そして、今度は日本GP参戦へとターゲットを移します。日本GPにスポット参戦するのは6回目。今回は例年に比べてモトGP開発テストの意味合いが増えるそうですが、これまでもテスト項目をこなしながらもポイント圏内の走りを見せています。モトGPクラス最高位は、2012年バレンシアGPの2位。今年WGP第4戦スペインGPに代役参戦した津田拓也(17位)が参戦後に「モトGP全員がワークスマシンに乗り、全員がとてつもなく速い。自分にとっては中須賀さんが20人いたようなもの。中須賀さんを抜けない自分が太刀打ちできるわけはない」と中須賀の強さを再認識して帰国しました。そして、速さを磨くために、モトGPフル参戦を願ってもいました。「あの緊張感の中で戦い続けたら、絶対に速くなれる」と感じたそうです。

 特別な才能を持つモトGPライダーたちは、年間18戦を戦います。そのなかで日本GPは15戦目、マシンも熟成され、ライダーも終盤に向けて技術力がアップしているところへスポット参戦するのは、ある意味無謀な戦いでもあるのです。それでも、中須賀は「世界最高峰のモトGPは、誰でもが参戦できるわけではないので、光栄です。日本人ライダーのレベルを示す戦いでもあると思っているから、恥ずかしい走りはできない。それは大きなプレッシャーでもある。それでも、ライダーとしてワクワク、ドキドキするし、どのレースとも違う緊張感がある。モトGPライダーのすごさを感じることができることは喜びでもある。参戦を継続してくれているヤマハへの感謝も大きい」と語ります。中須賀のすごさは、常に前を向き、進化していること。その中須賀が日本のプライドを賭けて、懸命のトライを見せる走りを、ぜひもてぎに見に来てほしいなと思うのです。