佐藤洋美撮影
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 オフシーズン振り返り企画3回目は、昨年9月に出かけた2017〜2018年世界耐久選手権(EWC)の開幕戦、フランス・ボルドール24時間耐久のお話です。

 EWCには様々なチームが参加していますが、今回は女性だけで構成された「ガールズレーシング」を紹介します。このチームは、オーナー兼ライダーのミュリエル・シモーレ(フランス・45歳)が立ち上げました。彼女がレースを始めたのは40歳。旦那様がレースをしていたことがきっかけで、「私もサーキットを走りたいと思ったの。女性だけでレーシングチームを作ったらきっとおもしろい。これはすごい閃きで、グッドアイディアだと思ったら、やらずにはいられなくなってしまったの。きっと、私と同じようにレースがしたいと考えていても、どうしていいか分からない女性ライダーがいるはず。難しいかもしれないけど、やってみなければわからないと思い、活動を始めたの」と語ります。その思いつきから生まれたチームですが、今ではサポートするスタッフも増え、24時間耐久に参戦するまでに大きくなりました。
佐藤洋美撮影
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 今年のラインナップは、シモーレを中心に、身長155cmと小柄なアマンディーヌ・クルソー(31歳)さんが加入。昨年4月のルマン24時間耐久は、男性ライダーと組んで参戦していました。マシンに乗り込むときも降りるときもメカニックがサポート、彼らを従えてピットアウトして行く雄姿が印象に残っていました。今回もいつも通り気合満点、出番を待つ体操選手のような身軽さでマシンに乗り込み、コースへと飛び出して行きました。

 そして、2回目の合流となったヨロンダ・バン・ウェストレネヘン(オランダ・31歳)は「レースに出ることは、小さい頃からの夢だったの。でも始めたのは大学生になってからよ。一度も諦めることなく、こうやってレースができていることが幸せ。オランダ国内のレースにも出ているの。以前、鈴鹿も走ったことがあるのよ。また日本に行けたらいいなと思っている」と笑顔を見せていました。長身を武器に楽々とマシンを操る柔軟なライディングで、チームの戦力となっていました。
佐藤洋美撮影
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 4人目のサビーネ・ボルブローク(ドイツ・37歳)は新加入。彼女は「37歳で女性でレースに参戦しているというと、やっぱり驚く人もいるけど、気持ちは20歳の頃と変わらない。挑戦する気持ちがあれば、なんでもできると思うの。だからこの参戦も心から楽しむだけ」と語った笑顔がチャーミングでした。

 シモーレは「昨年は22位でチェッカーを受けたの。もちろん、順位がいい方がいいに決まっているけど、私たちが目指すのは完走。みんなで力を合わせて24時間を走り切ることが大事」とグリッドにつきました。大きな天候の崩れはなかったものの、その過酷な戦いは変わらず。59台が出走し、完走は29台という厳しさでした。その戦いで「ガールズレーシング」は19位で見事チェッカーを受けました。

 レースの現場では、古典的な男女関係が普通で、コースに飛び出すライダーをフォローする献身的な女性ヘルパーたちの姿を見続けてきた目には、女性ライダーのフォローに回る男性たちの姿も新鮮でした。ロードレースは、男性、女性とクラス分けされていないスポーツ。ガールズレーシングの面々は、ライダーとして果敢にボルドール24時間耐久に挑み、力の限り戦い抜いてお互いの健闘を讃えあっていました。女性であることも、年齢も、何も言い訳にせずに、「走りたいから、レースがしたいからやるのだ」とシンプルな思いに突き動かされて奮闘する4人の姿が、南仏の光を受けて輝いていました。
◆ちょっとこぼれ話
 EWC開幕戦となったボルドール24時間耐久で、23時間経過し、最後のライダー交代で表彰台争いをしていたのも女性ライダーだったのですよ。セバスチャン・ジルベール(元ワールドスーパースポーツライダーで、故阿部典史選手のチームメイトだった)とドイツ人女性ライダーのルーシー・グロクナーが激しいバトルを展開したのです。軍配はセバスチャンに上がったのですが、ルーシーの走りに誰もが釘付けでした。もう女性ライダーという呼び方自体がなくなるのかも知れないなと思った出来事でした。