2017年チャンピオンはカマルザマン
アズラン・シャー・カマルザマン(マレーシア・カワサキ)
アズラン・シャー・カマルザマン(マレーシア・カワサキ)
 オフシーズン振り返り企画第10回目は、2017年のアジアロードレース選手権(ARRC)最終戦、タイのブリラム、チェーン・インターナショナルのSS600のタイトル争いのお話です。3月4日に開幕するARRCの前に、ぜひ、昨年の戦いも知っておいてもらえたらと思います。

 ARRCはアジア諸国を巡り、全6戦2レース制で戦われています。2017年第5戦インドのレース1でザクワン・ザイディ(マレーシア・ホンダ)が優勝、2位に羽田大河(ホンダ)、3位に伊藤勇樹(ヤマハ)が入り、レース2で伊藤が勝ち、2位にザイディ、3位羽田となり、この時点でランキングは、数々のチャンピオンを輩出しているMUSASHi Boon Siew Honda Racingのザイディが138ポイント(P)でトップ、通算3度目、V2タイトルを狙うザイディを、伊藤と羽田が同点の134Pで追います。4位に128Pでアズラン・シャー・カマルザマン(マレーシア・カワサキ)という中で、最終戦を迎えました。これからのレース界を牽引してほしい逸材、伊藤、羽田が同点で並ぶスリリングさに魅かれ、バチバチの対決を楽しみにタイに向かったのでした。
ザクワン・ザイディ(マレーシア・ホンダ)
ザクワン・ザイディ(マレーシア・ホンダ)
 YAMAHA Racingのエースライダー伊藤は、ARRC参戦6年目。2014年にはタイトル争いをするも、ライバルのチームメイトの執拗なブロックで、僅か1Pでザイディにタイトルを奪われた苦い経験があります。常にトップ争いの常連で、その実力は誰もが認めているだけに、今大会へ賭ける強い気持ちが伝わりました。

 羽田はアジアで育ったライダーで、元ワークスライダー手島雄介が監督を務める「RAMA Honda by NTS T.Pro Ten 10」の秘蔵っ子。先輩ライダーの小山知良からもアドバイスをもらい、伸び伸びしたライディングの成長株。羽田は「自分なりに速くなるにはどうしたらいいか、考えて、考えて、ここまで来た。だから、タイトル取れたら嬉しい」と元気いっぱいでした。

 カマルザマンの所属するManual Tech KYT kawasaki Racingのアドバイザーはチャンピオン経験者の藤原克昭で、「ARRCで10P差なんて、あってないようなもの。逆転の可能性は大きい」と語っていたのです。カマルザマンはアジアチャンピオンからモト2ライダーと夢を叶えたライダー。2017年の鈴鹿8時間耐久では2位表彰台に上がっています。
伊藤勇樹(ヤマハ)
伊藤勇樹(ヤマハ)
 藤原の言う通り、何が起こるかわからないのがARRCの魅力。走り出すと、宇井陽一がアドバイザーと務めるタイヤマハが新型マシンで上位を独占。カワサキもスポット参戦のタイ人ライダーが速く、タイトル争いと関係ないライダーが争う状況。予選ではザイディも羽田も転倒してしまい、緊張感が高まります。

 結果、レース1は、伊藤が転び、カマルザマン5位、羽田9位、ザイディ10位。レース2では、カマルザマンが意地の3位を獲得、ザイディも終盤に羽田をパスして7位、羽田は8位、伊藤は9位となり、カマルザマンが逆転チャンピオンを獲得するのです。カマルザマンは感涙、カワサキスタッフも涙、涙の劇的な逆転劇。カワサキにとっては2011年藤原以来のタイトル獲得に喜び爆発だったのです。

 ダブルウィンを飾ったのは、2016年のAP250チャンピオンでスポット参戦での快挙。アプワット・ウォンタナノン(タイ・ヤマハ)でした。タイヤマハで活躍する宇井の辣腕も素晴らしく、ウォンタナノンの今後の活躍に期待が集まる結果でした。
羽田大河(ホンダ)
羽田大河(ホンダ)
 今季もカマルザマンやザイディ、伊藤、羽田らの熾烈な戦いが繰り広げられることになりそう。伊藤、羽田は、最終戦では、自らの力を発揮出来なかった無念さを開幕からぶつけてくるはずです。実力者の小山知良はタイトル獲得の刺客としてSS600に復帰。ARRCは急激なレベルアップを遂げ、そこに傍若無人な新人が割って入るという予測のつかない戦い繰り広げられるのは必至。開幕戦からしっかりチェックして、タイトル争いの行方を追いかけて下さい。