写真/赤松孝
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 2019年最初のドロップショットは、マルク・マルケスのお話です。

 昨年、ホンダの母国GPであるもてぎ日本GPで、マルケスは5度目のタイトル獲得の期待がかかっていました。その前の第15戦、初開催となるタイGPでは、ドゥカティのドビツィオーゾとの熾烈なトップ争いを制し、好調を維持して日本入りとなりました。

 そんな中、レースウィークの水曜日には、神奈川県の有料道路「箱根ターンパイク」で、モトGPマシンを駆り、デコトラックや、スーパーカブ、ツーリングバイクらを次々にパスして豪快に峠を攻める動画を撮影。ホンダのパートナー企業のレッドブルの3年越しの悲願だったらしいですが、タイトル決定戦の直前の撮影に、ホンダ陣営では「誰が許可したのか?」と犯人捜しをしているらしい、とパドックで噂になっていました。

 マルケス本人は「ちょっと枯れ葉が落ちていて、スリッピーなところもあったけど、楽しかったよ」と涼しい顔で、何を騒いでいるのって感じでしたが…。
写真/赤松孝
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 マルケスの型破りなエピソードは尽きません。日本GPに訪れていた俳優の伊勢谷友介さんは、自身もレースをしていて、会見でマルケスに「限界を超えて転倒してしまうのだが、どうしたら良いのか?」と相談していました。この話を飛び魚こと遠藤智記者に伝えると、「マルケスは『俺も知りたいんだ』と答えてなかった?」と言って笑っていました。

 確かに、マルケスはこの会見後の走行でも派手に転倒していて、みんなを心配させていましたが、この限界まで攻める姿勢が、トップライダーとしての秘訣なのかも知れません。世界的に有名な小原斉メカニックに同様の話をしたら「限界まで攻めてもらうことで、そのマシンの性能を知ることができる。そこからセッティングが始まる。でも、転ぶまで攻めろとは言えないからね」と言っていました。
写真/赤松孝
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 ホンダを駆るライダーの中でも、マルケスは別格。彼だから勝てるのだと言われていますが、常に限界まで攻めて、マシンの状態を確認し、最高のパフォーマンスを引き出していくことできるマルケスは、やはり特別のライダーなのだと思います。それに応えようと、技術者のレベルも上がって行くわけですから、マルケスの攻撃的な姿勢はファンにとっても、一緒に働くスタッフにも魅力的に違いない。

 モトGPに昇格した2013年から、タイトルが獲得できなかったのは2015年だけで、昨シーズンを含めて5回ものタイトルを獲得。今シーズンも数々の記録を塗り替え、快進撃を続けていきそうな予感がしますが、マルケスに記録にはこだわりたいかと聞いたら「記録を残したいとは考えていない。チャンピオンになることを目標にはしているし、そこに向けてベストを尽くす。記録は、僕がライダーをリタイヤした後で振り返った時に、こんな記録が残ったのだと思うものなのかも知れない」と語っていました。
写真/赤松孝
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 会見が始まる前に、自分の前に置かれたテープレコーダーやスマホを、声が届きやすいように引き寄せ並べてくれるマルケスの優しさと、天才ライダーなのに気取らない気さくさに、会場に詰め掛けた日本人プレスはみんな、マルケスファンになっていたように思います。

 会見の最後、渋谷の若い女性に「GPライダーの中で誰がイケメンか」と聞いたSNSでのアンケート調査で、1番人気だったことを話したら「ヘルメットで顔が隠れているからじゃないか?」と照れて笑っていました。

 今年もマルケスの独壇場となるのか?チームメイトのホルヘ・ロレンソとのライバル関係、ヤマハ、スズキの逆襲と気になる2019年のシーズンインが待ち遠しいですね。
写真/赤松孝
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