春の息吹が吹き荒れる季節となり、いよいよ、全日本ロードレース選手権の開幕が近づいてきました。開幕戦は栃木県ツインリンクもてぎ、4月6日が決勝レースです。全クラス(JSB1000、JGP2、JGP3、ST600)開催され、最高峰JSB1000は決勝2レース制。ヤマハファクトリーVSホンダワークスの激突、そこへカワサキ、ヨシムラスズキが加わり、4メーカーの威信をかけたモンスターマシン同士のぶつかり合いが始まります。

 この戦いに先駆け、モータースポーツの開幕を告げる鈴鹿ファン感謝デーが3月上旬に三重県鈴鹿サーキットで行われました。ホンダとトヨタが協力し合う歴史的イベントとなった今回、4輪に話題が集中していたような気がしましたが、それでも2輪ファン注目のイベントも目白押しでした。

 その中から、エースライダーたちが集結したトークショーの模様を少しだけお伝えします。
 司会者から「各ライダーに夢を叶えるために必要と思うことは?」と尋ねられ、まずはテルルの秋吉耕佑(44)が「無理をしない。平常心を持ち、自分の技量の中でベストを尽くす」と答えると、付き合いが長く、2007年鈴鹿8耐ではペアライダーとして優勝を飾ったこともあるヨシムラの加賀山就臣(44)が「1番合わない答え」と鋭い突っ込み。

 「絶対に平常心なんてありえない。なんといっても宇宙人なんだから」と言うと、秋吉は「自分に足りないもの、願望を言ったんですよ」と笑顔。その願い、叶えてほしい気もしますが、秋吉の持ち味である異次元の走りをファンは期待していると思うので、無理をしない範囲で秋吉らしい走りを期待したいですね。

 続いて、モリワキの高橋裕紀(34)は「継続は力なり。決して諦めず、コツコツと夢に近づく」と答えました。全日本に復帰してから、レースやテスト走行のない日は、朝からミニバイクでスラロームの練習を行うなど地道なトレーニングを続けたことで、自身のスキルアップを感じているそうです。天性のセンスに努力を積み重ねたことで、鬼に金棒的な強さを感じます。

 ホンダの高橋巧(29)は「努力、センス、運」と語りました。「鈴鹿8耐では、とくに運の大事さを感じる。これを味方にできたら勝てるが、見放されると勝利も遠のく」としみじみ。ヤマハに鈴鹿8耐4連覇されている悔しさを感じさせました。今年はマシンのポテンシャルアップも噂され、反撃に燃えています。

 ハルクの水野涼(20)というと「努力、気合、運。たまには気合も必要かな」。水野の強さでもある平常心、慌てず騒がず、冷静であることが武器ですが、その水野が、自分にはきっと似合わないと思っている“気合”を口にしたのです。今年は気合を入れた新しい水野が見られるかと思うと楽しみです。
 ヨシムラ2年目となる渡辺一樹(28)は「パートナー」。ミニバイク時代は父親、ロードレースではチームメカニック、観客の応援も含めて、支えてくれる人がいてくれることが大事だと語りました。「伴侶は?」と聞かれ「独身なので募集中」と答えていましたよ。

 チームを移籍し、新たな環境で戦う津田拓也(33)は「続けること」とシンプルな答え。「28歳で契約ライダーとなり、そこまで続けたことでチャンスを掴めた。続けることが、夢を掴むための第一条件」と胸を張りました。夢を追いかけて来た時間の重みが、説得力を持って響きます。

 ヨシムラへの電撃移籍で、オフシーズン最大の話題を集めた加賀山は「努力、腕力、金」。チームオーナーであり、ライダーである加賀山ならではの本音がちらり。腕力といっても暴力ではなく、目的のものをゲットする力強い意志といった意味合いでしょうか?その強い気持ちが加賀山の魅力。若いライダーたちに喝を入れてくれそうな予感です。

 カワサキのエース渡辺一馬(28)は「つながり」。人との結びつき、縁、それを大事にしてきた渡辺の言葉ではないかと思います。

 トークショー後半はタイムリミットが迫って駆け足の答えになりましたが、まずヤマハ勢、絶対王者の中須賀克行(37)は「目標設定」、野左根航汰(23)は「気合」、前田恵助(21)が「ひとつひとつ階段を上がる」と答えました。

 中須賀はこれまで最高峰クラスで8度もタイトルを獲得、目標を定め、ブレずに最大限の努力を重ねてきた彼こその言葉です。

 野左根は、その中須賀のチームメイトでライバルとしなければならず、この王様を倒すには、理屈じゃなくて気合だと思ったのではないでしょうか。前田は、昨年6月に負った大きなケガからの復帰のシーズン、確実な歩みを目標に掲げました。

 ライダーにとっての夢は、レースで勝つこと。世界耐久選手権チャンピオンのジョシュ・フック(26)も、夢を叶えるために必要なものは「勝てるチーム」だと語りました。

 それぞれの個性と魅力にあふれたライダーたちが狙うのは同じ「開幕戦勝利」。トレーニングに明け暮れ、テストを重ね、その成果を見せるために実戦の舞台に向かうのです。身震いするような闘志でグリッドにつくライダーたちの戦いを、見逃さないでほしいなと心から思います。