晴天に恵まれた先月9日、茨城県筑波サーキットで開催された3月筑波選手権に取材へ出かけました。これからのレース界を担う若きライダーたちが切磋琢磨する舞台です。大治郎カップ卒業生たちの成長した姿を見ることもでき、楽しい時間でした。

 そんな中、パドックで一際存在感のあるテントが「56RACING」。元モトGPライダーで、憧れの「バリバリ伝説」(講談社・しげの秀一氏作)の主人公、巨摩郡(こま ぐん)のナンバー56をつけ、走り続けた中野真矢(41)が率いるチームです。

 5歳からポケットバイクに乗り、ミニバイクで数々のチャンピオンを獲得、名門「SP忠男レーシング」でその才能を開花させ、1998年全日本ロードレース選手権GP250のタイトルに輝くと、翌年には世界ロードレース選手権(WGP)に参戦開始。GP250、GP500、モトGPの各クラスでトップライダーとして駆け抜けました。美しいライディングスタイル、端正な顔立ちと紳士な物腰で「中野王子」と呼ばれ、世界中のファンを魅了しました。11年間にも及ぶ海外参戦を終え、2009年に引退。現役ライダーとしての輝きを持ったまま、サーキットを去りました。

 その後、地元千葉県にモーターサイクル系ブランド「56design」を立ち上げます。海外のバイク文化に刺激を受けた中野が立ち上げたオリジナルブランドショップで、ライダーとしての経験を生かしたライディングウェア、小物などが置かれています。テーマは「バイクのある生活」。
梶山采千夏(15歳)
梶山采千夏(15歳)
 2012年からは、世界を目指す若いライダーの育成をサポートする「56RACING」を発足し、地方選手権への参戦を開始します。今季はCBR250RRドリームカップや海外レースに参戦するライダーをサポートしています。

 CBR250RRドリームカップには、梶山采千夏(15歳)が昨年から継続参戦。今年はもう一人、田中風如(14歳)も今季から加入しました。ふたりは筑波と鈴鹿大会に出場し、全国大会が行われる鈴鹿サーキットでのグランドチャンピオンシップ大会出場を目指しています。

 サポートライダーの埜口遥希(16歳)は、スペインのFIM CEVレプソル世界選手権モト3、レッドブルルーキーズカップに参戦。松山拓磨(14歳)はアジアタレントカップ出場及び、ツインリンクもてぎの地方選手権にスポット参戦しています。
田中風如(14歳)
田中風如(14歳)
 CBR250RRドリームカップ筑波戦では、レースデビューの田中が優勝を飾り、梶山も2位に入り、1、2フィニッシュ。レース展開は、田中が予選で転倒するも3番手、梶山はトップと僅差の2番手からそれぞれスタートし、レース序盤からトップ争いを繰り広げます。しかし、ラスト2周で転倒車が出て赤旗終了となり、田中の優勝が決まりました。

 田中は「3台の争いとなったので、途中で何があっても良いように毎周フィニッシュラインを1位通過することを意識していた」と素晴らしすぎるコメント。なかなか言えないし、できないことだなと思うのです。中野は「チームを立ち上げて8年目で、筑波選手権初の1、2フィニッシュを飾ることができました。田中選手は筑波デビュー戦で優勝でき、梶山選手も練習で負った怪我の影響がありながらも冷静に最後まで戦ってくれた」と嬉しそうでした。

 中野監督のレーシングチームが、全日本、世界と大きくなってくれたらいいのにと言うと、「身の丈にあった」といつも言います。ポケットバイクで腕を磨いた才能の受け皿として、たくさんのライダーを支えてくれています。ここで、学んだライダーたちは、全日本、世界への扉を叩き、夢を叶えようと戦っています。これからますます、56RACINGのライダーたちにも注目していきたいなと思った筑波戦でした。
 ※56designのホーム―ページやカタログのモデルは、中野監督が務めていたのですが、最近は卒業生の名越哲平が登場しています。名越は名門ハルク・プロで、全日本ロードレース選手権JGP2参戦、チャンピオン候補として戦っています。