EWC提供
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 2輪レースイベントのなかで、世界耐久ロードレース選手権シリーズ(EWC)をロードレース世界選手権(WGP)やワールドスーパーバイク世界選手権(WSB)に並ぶイベントにすべく、さまざまな取り組みが行われています。フランスでは国民的なイベントともいえるルマン24時間やボルドール24時間、そこにスロバキア、ドイツ、日本の8時間耐久レースが加わり全5戦で昨シーズン戦われましたが、今季はスロバキアに代わりマレーシア、来季はドイツに代わりベルギーのスパ・フランコシャンで24時間レースが開催されることになり、24時間耐久レースが計3大会、マレーシアと日本の計2大会で8時間耐久レースとなることが発表されています。
佐藤洋美撮影
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 昨年12月、2019−2020年シーズン第2戦で、初開催となるセパン8時間耐久ロードレースでは、レースへの関心を集めるべく、ヤマハからゼッケン21番「ヤマハ・セパン・レーシング」がエントリーしました。モトGPライダーのフランコ・モビリデリ(イタリア)、マレーシアの英雄、ハフィス・シャーリン(マレーシア)、鈴鹿8耐では4度もの勝利を数えるWSBのマイケル・ファンデルマーク(オランダ)が顔を揃えました。モビリデリは初の耐久参戦、予選ではただ一人2分3秒台に入れ、関係者を「さすが」と唸らせ、トップタイムを叩き出します。

 ヤマハが送り込んだゼッケン21のスペシャルチームに注目が集まった大会ですが、私は浦本修充がスペイン選手権を戦っているチーム「SUZUKI JEG ― KAGAYAM」に注目しました。今季はスペイン選手権以外にEWCにもフル参戦する予定で、浦本は開幕戦のボルドール24時間耐久(結果は23位)にも参戦しています。マシンはトップチームのような仕上げられているものではなく、限りなく市販車に近いスタンダードマシンですが、グレゴリー・ルブラン、浦本修充、津田拓也のライダーラインアップは、上位を狙う力を秘めていました。
EWC提供
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 アジア圏のレースということもあり、24時間耐久で表彰台にあがった実績を持つ津田が助っ人に選ばれました。ルブランはEWCのトップライダーで、優勝経験も豊富、浦本はエースライダーとしてチームの信頼も厚い。私にとっては、海外参戦で鍛えられた浦本の成長を見ることが一つの注目ポイントでした。

 ですが、マシンのセットアップが決まらず、フリー走行、予選はコース上よりもピットにいる時間が長く、思うようにアタックできないまま予選は15番手に。決勝レースは大雨の影響でスタートがディレイ、実質3時間耐久にまで短縮されます。
佐藤洋美撮影
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 ようやくレースが本格スタートした直後はファンデルマークがトップを快走、TSRホンダフランスのマイク・デ・メリオ(フランス)が迫り、バトルを繰り広げますが、デ・メリオがファンデルマークを巻き込み転倒する大波乱、デ・メリオは再スタートを切り、トップでコース復帰しますが、ファンデルマークは直後にピットインし、10分のストップ後にコース復帰します。

 レース中盤、トップはデ・メリオ、YARTヤマハのニッコロ・カネパ(イタリア)が電子制御トラブルを抱えたまま追い上げて2番手、続く3番手には浦本が浮上してきます。

 そんな中でトップのデ・メリオが転倒、カネパが首位、浦本が2番手に浮上します。誰もが浦本の快走に目を奪われました。EWCでは、まだ存在を知られていない新人ですから、あれは誰?といったざわめきが起こる中、転倒者が相次ぐ波乱のレースでその力を示し続けます。

 ところが、電気系のトラブルが発生、ピットインを余儀なくされます。エンジニアが必死に修復作業し、グレゴリーがコース復帰しますが、結果は43位となりました。

 それでも、浦本のインパクトは大きく、ライダーとしてのスキルの高さを示したことは確かでした。
EWC提供
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 カネパはそのまま連続走行を行い勝利、ファンデルマークは怒涛の追い上げで7位まで浮上しました。浦本も、彼らに負けない走りを示していたのです。

 浦本は「雨の走行はほとんどしていなかったけど、追い上げる自信があった。トラブルがなければカネパのように連続走行でチェッカーを受ける予定だったから、走り切れなかったのは残念。だけど、予選ではチームベストを記録できた。決勝でも上位を走ることができたことは事実だし、これを自信として行きたい」と語りました。

 今年も全日本を走る予定はなく、スペイン選手権フル参戦3年目で、勝負の年。2019年ランク5位からのジャンプアップを目指します。昨年のランク1、2位はスーパーバイク世界選手権へとステップアップしています。「ここからWSBへ」が、浦本がスペイン選手権にこだわる理由。「今年はガツーンと勝負していきたい」とスペインに拠点を置き、その力を遺憾なく示し、世界の扉をこじ開けようとしています。今季の活躍を日本から熱烈に応援したいなと思ったセパン8耐でした。
佐藤洋美撮影
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