第433回
「絶対帰還」を読むと、人間の宇宙へのチャレンジは、凡人の想像を遥かに超えるところに到達していることを知ることになる。ただただ圧倒されるばかりである
「絶対帰還」を読むと、人間の宇宙へのチャレンジは、凡人の想像を遥かに超えるところに到達していることを知ることになる。ただただ圧倒されるばかりである
 作家の椎名誠さんが週刊文春のコラム「風まかせ赤マント」で絶賛していた「絶対帰還」(クリス・ジョーンズ=光文社)を買った。まだ読み出したばかりだが、冒頭からぐいぐい引き込まれてしまった。この本は米国、ロシアを中心に世界16カ国が参加して建設されている有人宇宙施設(国際宇宙ステーション)にまつわる話である。

 この宇宙ステーションは地上から400km上空を時速2万8000kmという猛スピードで飛んでいる。地球を1周するのに、わずか90分間。そこには常時2、3人の宇宙飛行士が滞在していて、研究、実験を行っているのだが、2003年に事故が起きた。交代する宇宙飛行士を乗せて地球に戻ろうとしたスペースシャトル「コロンビア」が、大気圏突入の際に事故で空中分解して7人の宇宙飛行士が亡くなった。この本はその事故で宇宙ステーションに取り残されてしまった3人の宇宙飛行士が、地球に戻るまでの話を描いたノンフィクションである。

 興味深い話が次々に出て来るので、急ぎの仕事をほっぽっても読んでいたい気分にさせられる。宇宙飛行士というのは夢のある仕事だが、常に危険にさらされているのだ、ということがよく分かる。宇宙への飛行を前にジンクスや不吉な数字を気にするシーンがたくさん出て来る。ライダーやドライバーという仕事も危険な職業であり、ジンクスやお守り、走行前の儀式にこだわるが、それを思い起こさせる話だった。

 1986年には、スペースシャトル「チャレンジャー」が打ち上げ時に爆発して7人の宇宙飛行士が亡くなった。スペースシャトルの発射でもっとも危険なのは、地上を飛び立ち、宇宙空間に出るまでの数分間である。その事故でわかったことは、シャトルの腹の下に固定されている大きなタンクが、液体水素と液体酸素の入った燃料タンクだということ。その大きさはジャンボジェットの胴体とほぼ同じであり、そこで何かが起きたら、もうどうにも出来ない。

 自動車の燃料タンクが車体全体に占める割合は約5%、ジェット戦闘機は約30%だという。それに比べて、打ち上げ時のシャトルは、胴体に固定されている燃料タンクと固体ロケット・ブースターの燃料を合わせると約85%が燃料なのだそうだ。宇宙に飛び立つには、本当に大量の燃料がいるのだということを知らされる数字だった。

 この宇宙ステーション建設は98年11月にスタートした。この原稿を書いている今も400km上空を猛スピードで回っていると思うと、あらためて人類はすごいことをしているなあと感動させられる。

 これまで事故で亡くなった大勢の宇宙飛行士たちのためにも、いつかお守りもジンクスも気にせず、宇宙に飛び立てる日がくることを願うばかりである。「絶対帰還。」。ノンフィクションのすごさを痛感させられる一冊である。 (モータースポーツジャーナリスト)

■2008年11月13日掲載



 プラネットフォールは、つい最近購入した本だが、これもまた、ただただ圧倒されるばかりである。気が遠くなるような時間を掛けて、はるか彼方の宇宙に飛び出して行った無人探査機から送られてきたデータの集大成。火星、木星、土星・・・の貴重な写真を見ることが出来る。先日、映画「アポロ13」を見たが、この映画もまた、13という不吉な数字にまつわるエピソードが冒頭に登場する。科学の最先端にいる人たちが、こうしたジンクスを気にするのが興味深かった。