第442回
世界文化遺産モンサンミッシェル。フランスGPの舞台となるル・マンから約3時間ほどで行ける。25年間のタビビト生活でここを訪れたのは3回。これは、2011年に訪れたときのもの。綺麗な夕焼けの中にモンサンミッシェルが浮かび上がった
世界文化遺産モンサンミッシェル。フランスGPの舞台となるル・マンから約3時間ほどで行ける。25年間のタビビト生活でここを訪れたのは3回。これは、2011年に訪れたときのもの。綺麗な夕焼けの中にモンサンミッシェルが浮かび上がった
 あたりまえのことだが、選手や関係者と話すことは、ほとんどがレースのことになる。うわさ話に始まり、マシンのあれやこれやとキリがない。皆、本当にバイクが好きなんだなと思う。しかしレースと関係ない話で盛り上がることもある。その代表が旅の話である。

 ライダーで旅の話が好きなのは、今年からモトGPに参戦する高橋裕紀である。去年はフランスGPを終えて、世界遺産のモンサンミシェルに行ったそうだ。フランスGPの舞台ルマンからモンサンミッシェルまでクルマで3時間。裕紀はレースの翌日に行き、僕は月曜のテストが終わり、火曜日に。1日違いで同じ場所を訪れていたことを知り、後で大笑いとなった。

 旅好きの選手は僕が訪れた名所旧跡、街の話を興味深く聞いてくれる。だから、つい得意になる。レースの話を何もせず時間がすぎてしまうこともあり、原稿を書く段になり「なにも聞いてなかったなあ・・・」と、今大会への意気込みなどを電話で聞くこともある。
2008年の高橋裕紀。250ccクラスで総合5位。フランスGPは4位だった。一日違いでモンサンミッシェルを訪れていたことを、後で知ることになる
2008年の高橋裕紀。250ccクラスで総合5位。フランスGPは4位だった。一日違いでモンサンミッシェルを訪れていたことを、後で知ることになる
 でもそんなムダ話もどこかで一本の線につながる。裕紀の旅好きの理由もそんな話の中から知ることができた。「ポケバイに乗り始め、両親が毎週のようにレース場につれていってくれた。当時は普通のことだと思っていたが、自分の時間を犠牲にしてくれていたんだと思う。思い返せばレースの合間によく山や海へプチ旅行につれていってくれた。僕がレースの合間に旅行するのはそういう息抜きの仕方を両親から教わったから。いま思えば、それが両親の息抜きだったのかもしれないですね」と、語っていた。

 旅好きのライダー、関係者は多い。そういう人たちに「欧州でここだけはという場所はありますか」と聞かれることがある。そんなときに僕は、「ロンドンの大英博物館」と答える。いろいろなところに行き、たとえばギリシャの古代遺跡を訪れて博物館に入ると「オリジナルは大英博物館に所蔵されている」と記されているのを見ることが多いからだ。

 大英博物館にはエジプトのピラミッドから発掘されたミイラが100体以上あったような気がする。それを見るだけで、映画「インディ・ジョーンズ」シリーズが一段と面白くなる。そして最も感動し、驚いたのは葛飾北斎、安藤広重などの浮世絵が所蔵されていることだった。

 今年の正月、池澤夏樹さんの「パレオマニア」(集英社)という本を見つけた。サブタイトルが「大英博物館からの13の旅」。迷わず手に取った。こういう本は読むタイミングと場所が大事になる。もうすぐ今年初の遠征がスタートとする。1年の旅の始まりとなる飛行機の中で、それを読みたいと思っているのだ。 (GPライター)

■2009年1月22日掲載



 いまから150年ほど前に陸地からモンサンミッシェルまでの道路(土手)を造ってしまったために潮の流れがせきとめられ、モンサンミッシェルはどんどん陸地化が進んだ。本来の姿を取り戻すために、06年に一大土木工事がスタートし、11年末には道路を取り壊す工事のために、クルマではモンサンミッシェルに行くことができなくなった。道路(土手)を撤去、そのとなりに橋をつくる工事も始まり、11年末からは陸地とモンサンミッシェルはシャトルバスで結ばれている。いま、いろいろネットで調べると、今年、その橋が完成したらしく、その橋は満潮時には海に沈むようにつくられているらしい。堆積した土砂を取り除くなど、一大土木工事が終了するのは15年とのことだが、そのうち、海に沈むモンサンミッシェルを見に行けたらと思っている。これは08年に撮影したものだが、陸地化が進み、羊が放牧されている。いまとなっては、懐かしい写真になってしまったのかも知れないなあと思うのだ。