第448回
ヤマハからドゥカティに移籍して初レースを優勝で飾った芳賀紀行。予選は13番手。しかし、決勝では、優勝、2位としっかりと力を見せつけた。そして、この年は最終戦までB・スピース(ヤマハ)とし烈なチャンピオン争いを繰り広げることになる
ヤマハからドゥカティに移籍して初レースを優勝で飾った芳賀紀行。予選は13番手。しかし、決勝では、優勝、2位としっかりと力を見せつけた。そして、この年は最終戦までB・スピース(ヤマハ)とし烈なチャンピオン争いを繰り広げることになる
 豪州は100年に1度という熱波に襲われている。メルボルンでは40℃を超える猛暑が続き、観測史上最高気温を記録している。熱波のために亡くなる人もいて、電力不足で街が停電に見舞われている。山火事の被害も広がっている。そんなニュースを聞き、すごいことになっているんだなと思いつつメルボルンへと向かった。

 スーパーバイク世界選手権(WSB)開幕戦の舞台となるフィリップアイランドはメルボルンから約180km。クルマで約2時間の道のりだが、途中、芝生と木々が黒く焼け跡になっているところがあった。
スーパーバイク世界選手権にスイッチ。カワサキで2年目のタマヤンこと玉田誠は予選22位から18位&17位だった。2年目も思うようにバイクが仕上がらず、苦しいシーズンを過ごすことになる
スーパーバイク世界選手権にスイッチ。カワサキで2年目のタマヤンこと玉田誠は予選22位から18位&17位だった。2年目も思うようにバイクが仕上がらず、苦しいシーズンを過ごすことになる
 この10数年、年に何度も訪れる場所だが、こうした光景を見るのは初めてのことだ。昨年は、100年に1度といわれる世界同時不況となったが、この数カ月で2度も100年に1度…を経験したことになる。

 しかし、到着してから数日は雲が多くて気温も20度前後と思ったほど暑くはない。熱波は通りすぎたのかと思ったら、金曜の午後に青空が広がったとたん、あっという間に33度まで気温が上昇した。再び、雲が空を覆ったので、それ以上にはならなかったが、こんな天気が1日続けば40度なんてすぐだろう思った。

 サーキット内にある池の水量が半分に減っていた。芝生が枯れ、地面もカラカラに乾いている。セッションの合間にたばこを一服…というのが、コースサイドに出たカメラマンの楽しみであり、あたりまえの光景だが、誰もたばこを吸っていない。というか、こんな状態だからたばこなんて吸えない。火気厳禁だろうと自主規制するほど、何もかもが乾き切っているのだ。
スーパーバイク世界選手権にスイッチして2年目の清成龍一は予選10位からリタイヤ、23位と厳しいスタートになっていた。清成はWSBで2年目のチャレンジを迎えていたが、最後まで自分の思うようなバイクに仕上がることはなかった。それでも、08年は3勝しているが、09年は一度も優勝するこは出来なかった
スーパーバイク世界選手権にスイッチして2年目の清成龍一は予選10位からリタイヤ、23位と厳しいスタートになっていた。清成はWSBで2年目のチャレンジを迎えていたが、最後まで自分の思うようなバイクに仕上がることはなかった。それでも、08年は3勝しているが、09年は一度も優勝するこは出来なかった
 メルボルンに到着した日、空港で他州の制服を着た消防士の団体を見た。山火事で大きな被害に遭っているビクトリア州へ応援に駆けつけてきたのだろう。燃える現場は見ていないが、危険な状態にある大地をフィリップアイランドでしかと感じ取ることができた。

 そんな乾き切った状況のなか、芳賀紀行がドゥカティ移籍初レースを優勝で飾った。ウイニングランの写真を撮ってから表彰台までおよそ1.5km。フィリップアイランドでは、スクーターもシャトルバスもないので、600mmという重いレンズを持って走ることになる。表彰台に到着したときには、息は絶え絶え、脚もガクガクだった。
モトGPからWSBにスイッチの中野真矢は予選9位から15位&12位。アプリリアの期待の中でのニューチャレンジだったが、シーズン前半戦のスペイン大会でオイル漏れによる転倒で左鎖骨を骨折、その怪我がシーズンを通じて影響し、シーズン終盤戦、欠場が続いたことから引退を決めた
モトGPからWSBにスイッチの中野真矢は予選9位から15位&12位。アプリリアの期待の中でのニューチャレンジだったが、シーズン前半戦のスペイン大会でオイル漏れによる転倒で左鎖骨を骨折、その怪我がシーズンを通じて影響し、シーズン終盤戦、欠場が続いたことから引退を決めた
 翌日、日本に帰る飛行機で芳賀と一緒になった。地元名古屋の友人が中日スポーツの紙面を写真に撮って携帯で送ってくれたそうで「デッカク載ってたね」とうれしそうだった。そんな芳賀を見たら、のどをカラカラにして1.5kmを走った疲れも吹き飛んだ。乾き切った大地には困ったものだが、こういうのどの渇きは実にうれしいではないか、と思ったのだ。  (GPライター)

■2009年3月5日掲載
芳賀の開幕戦Vは3月2日付の中日スポーツでも大きく報じられた
芳賀の開幕戦Vは3月2日付の中日スポーツでも大きく報じられた


 この年も多くの日本人選手がWSBに参戦した。写真では紹介出来なかったが、開幕戦オーストラリア大会で3位表彰台に立った加賀山就臣、スーパースポーツ世界選手権には藤原克昭が参戦していた。09年はWGPではモトGPクラスに高橋裕紀が参戦、青山博一が250ccクラスで活躍、富沢祥也がデビューするなど話題豊富。WSBも日本のレース界を牽引してきた有力選手が多く出場して開幕戦から盛り上がった。その中でも、ハガノリこと芳賀紀行がチャンピオンチームのドゥカティに移籍、日本人初のWSBタイトル獲得の期待が膨らんだ。その期待に応えた開幕戦の興奮は、いまでも鮮明に記憶に残っている。写真は、フィリップアイランドで定宿にしているモーテル。今年(2014年)のWGPを最後にオーナーが代わることになった。このモーテルに泊まるようになって来年は4代目の新オーナーとなる。長いことタビビト人生やっているなあとつくづく思ったのである。