第449回
2009年のモトGPクラスの集合写真。ちょっと前なのだが、いろんな意味で大きなターニングポイントとなるシーズンだった。ドゥカティのC・ストーナーとN・ヘイデンのスーツに「Marlboro」のロゴが入った最後のシーズン。この頃はスズキが参戦(その後、撤退。来季から復帰)、撤退を決めたカワサキがM・メランドリ(上段左)を起用し一年だけ「ハヤテ」として出場した。そして、高橋裕紀がモトGPクラスに参戦するというシーズンだった
2009年のモトGPクラスの集合写真。ちょっと前なのだが、いろんな意味で大きなターニングポイントとなるシーズンだった。ドゥカティのC・ストーナーとN・ヘイデンのスーツに「Marlboro」のロゴが入った最後のシーズン。この頃はスズキが参戦(その後、撤退。来季から復帰)、撤退を決めたカワサキがM・メランドリ(上段左)を起用し一年だけ「ハヤテ」として出場した。そして、高橋裕紀がモトGPクラスに参戦するというシーズンだった
 羽田から関空(関西空港)を経由してカタール・ドーハへ飛んで来た。マレーシア、豪州に続いて、これが今年3回目の海外遠征である。この3回の遠征で気づいたことは、ビジネスクラスの空席が目立つことだった。世界同時不況の影響で出張禁止になっている企業が多いと聞く。飛行機の旅は世の中の景気の動向をあからさまに反映するのだが、不況の連鎖反応は恐ろしい。そのために空の便も、減便、廃止が相次いでいるようで、これまでも決してにぎやかとはいえなかった関空が一段と寂しくなっていた。

 これがアジアのハブ空港を目指し、24時間運用でスタートした空港なのだろうか、と思う。カタール行きは関空を深夜に出発するのだが、他の出発便はあるのだろうかと思うほど閑散としていた。出発ゲートに着くと、開いている店もなく飲料水の自動販売機だけが稼働している。仕方がないので缶コーヒーを買って出発まで喫煙室で時間をつぶすことにした。

 そこへ中東系の顔立ちをした中年男性が来た。そして、「あなたはどこから来たのか?」と言葉をかけてきた。「ワタシですか?ワタシ、日本人です」と答えると、ナンダそうだったのか、という顔をされた。ずいぶん失礼なヤツだ。そんなことはどうでもいいのだが、ならば聞いてくれと、その男は語り始めた。私はトルコ人で午後のフライトで到着したのだが入国させてもらえず、乗ってきた飛行機でトルコに帰らねばなけない。なぜ? どうして? と怒りをぶちまけてきた。

 「・・・って言われてもなあ」である。「いろいろな国に行ったけどこんなの初めてだ。だから、オレは帰らない」と言い張るのだが、その間にも、カタール航空から何度も何度も呼び出しがかかる。「これ、オレのことだよ。オレ、ずっと呼ばれている」と寂しそうだった。これまで、国籍不明者としては、数限りないエピソードを持つタビビトだが、今回もまた外国人には、話しかけやすい人物だったようだ。
2009年、WGPに参戦した日本人選手たち。左から、富沢祥也、青山博一、小山知良、中上貴晶、高橋裕紀。この年は、毎戦、こうして日本人選手が集まって食事をした
2009年、WGPに参戦した日本人選手たち。左から、富沢祥也、青山博一、小山知良、中上貴晶、高橋裕紀。この年は、毎戦、こうして日本人選手が集まって食事をした
 そこで思い出したのがこんなエピソードである。その昔、インドから日本に帰るフライトで、長らく放浪生活をしていたのだろうと思われる酔っぱらいの日本人の青年に「ねえねえ、一緒にハイジャックしようぜ」と声をかけられたことがある。ナンダコイツは、と相手にしなかったら、他の乗客にも声を掛け始めた。それを見た男性客室乗務員が、「他の乗客に迷惑なので」と制止。そして、後部座席の方に連れて行こうとしたら、突然、大声を出して暴れだす。

 その男は、すぐに取り押さえられたが、機内は騒然。暴行を受けた客室乗務員は、額から血を流していて、緊張感あふれることになっていた。その後、飛行機はタイのバンコックに緊急着陸することを告げられ、着陸すると機内にどどっと入って来た警察官たちに、ハイジャックしようぜ青年は、あっという間に逮捕されてしまったのだ。

 そして、ハイジャックしようぜ青年の彼女なのだろう。その日本人の女性に警察官が客室乗務員を通じて話しかけている。「あなたの連れの方は重罪です。おそらく、もう二度と日本には帰れないでしょう。どうしますか?あなたは彼と一緒にこの飛行機を降りますか?それとも日本に帰りますか?」。

 「もう二度と日本に帰れないでしょう」という言葉があまりにも衝撃的であり、これが、1年中真っ黒くろすけのタビビトの驚愕(がく)事件NO.1だった。

 関空を深夜に出発。早朝、カタールについてみれば、霧なのか砂嵐なのか真っ白けの視界不良である。これも世相を反映しているのだろうかと思うほどだったが、いやいや、WSBの豪州大会に続き、今週も日本人選手が必ずや明るい話題を提供してくれるに違いないと思っているのである。 (GPライター)

■2009年3月12日掲載



 2008年からスタートしたナイトレース(写真はドルナ提供)だが、世界同時不況の中でナイトレースの是非が問われたシーズンだった。いま振り返っても、2008年までとそれ以降では、いろんなことが劇的に変化していった時代だった。何でもない写真だが、じっくり見ているとたくさんのストーリーがちりばめられている。V・ロッシ VS J・ロレンソのチーム内の戦い。カワサキがハヤテとして参戦。まもなく訪れるタバコブランドの全面広告禁止時代、高橋裕紀のシート喪失・・・。思い出深いシーズンでもある。