第25回
 F1の歴史や伝統であり、ティフォシの聖地であるモンツァで、これまたF1の歴史ともいえるフェラーリが勝利を収めた。

 アロンソがチェッカーを受けた瞬間、他のグランプリにない猛烈なエネルギーを感じた。跳ね馬が描かれた赤いマシン、フェラーリの勝利だけを祈るティフォシ、クラシックなコース、情熱的なアロンソというドライバー……。完ぺきとも言える跳ね馬の勝利と歓喜はこのすべての要素がそろって成立したもので、素晴らしい光景だった。今回はその“馬”つながりという話題でホース・セラピーについて話をしたい。

 馬を素手で捕まえると言ったら驚くだろうか? 馬と会話が成立するくらいの人だと、自然に「やあ」という感じで簡単に馬を捕まえることができる。僕も挑戦したが、そうはうまくいかない。抜き足で近寄ると肉食動物の動きになり、草食動物の馬は逃げる。「うまく捕まえてやろう」なんていうエゴも馬に見透かされてしまうから、作戦のようなものも通用しない。

 その過程で気が付いたのは「空気を読む」のではなく「空気をつくる」ということ。我慢とか辛抱ではなく「仲良くしたい」という空気をつくることで、急に緊張感が緩む。まず自分が心を素にして開くこと。そうすると馬も自然に心を開いてくれる。これは同じ動物同士だからこそ成立する次元の高い話だ。

 これはぜひ子供たちに体験してほしいということで、先日の「チーム右京・チャレンジ・スクール」では「馬と牧場生活」という課題に取り組んだ。馬と触れ合い、気持ちを通わせることで、素のままの自分を見つめるプログラムで、これまで自己の限界に挑戦してきたチャレンジ・スクールとしては少し変わった趣向。でも自分の殻を取り去るという意味では基本は同じだ。

 とはいえこれまでのトレッキングやカヌー、カートといったプログラムとは大きく違う。相手が生き物だから思うようにいかないのだ。馬という動物はとてもかしこい動物。人間を警戒するかと思えば、すきを見せるとイニシアチブを奪われるからね。

 今回のチャレンジ・スクールに参加した子供たちも、最初は少し怖がっていた。自分より大きな馬に触ることもできなかった。

 そんな子供たちに与えられた課題は「2日間、子供たち皆でお馬さんの命を守ること」。重大なミッションを与えられた子供たちは戸惑いながらも水や餌をあげて厩舎(きゅうしゃ)を掃除して馬の命を守った。その過程で馬との距離を自然に詰めていく様子はとても感動的だった。きっと言葉にはできない、そして目に見えないものを手に入れたと思う。(レーシング・ドライバー&冒険家)