日本を出発してから10日がたった。今、ビンソンマシフのハイキャンプ、標高4000メートルの地点にいる。16日にチリのプンタアレナスを出発して南極大陸に上陸。そのまま飛行機で標高2200メートルのベースキャンプに入り、19日にこのハイキャンプに入った。

 天候にも恵まれ、ここまではとても順調。ただやはり南極だけあって寒い。酸素が薄いことや周囲に風を遮るものがないことから、通常の4000メートルより少し寒く感じるみたいだ。

 体調は悪くないので早く頂上に立ちたいが、どうやら天候が怪しい気配。自然には勝てないし、自分では気付かないうちに疲れもたまる。休息も兼ねて、天候回復を待つことにした。

 それにしてもハイキャンプから見る眺めは今まで見たこともない風景だ。当たり前だが木々は一切なく、雪原を見下ろしている。内陸部なのでペンギンやあざらしも全く見当たらず、テレビに出てくる昭和基地周辺や南極のイメージ映像とは別ものだ。

 でも山頂まで行けば周囲の山や南極大陸が見下ろせるとのこと。ヒマラヤとはまた違った絶景が、僕を待っていることだろう。

 そして、夏の南極大陸は太陽が沈まない白夜の季節。陽が沈まないというのは不思議な感覚だが、行動時間が長くなっても闇夜になるというリスクはない。一方で隔年で天候不順になるらしく、今年はどちらかといえば悪い年のようだ。そういうこともあって、今は天候の回復を待っている。でも、このコラムが掲載されるころには、恐らく天候も良くなってくるだろう。

 今回のビンソンマシフ登山は、絶対に成功させたい。なぜならこの登山は1年前に富士山で失った大切な仲間と一緒に見た夢だからだ。亡くなった2人の遺志を継ぎ、その先に見た夢を実現するためには、今回の一歩はどうしても必要なのだ。そして登頂に成功したとき、そこからまた2人と一緒に目指した夢が再び動きだす。

 ビンソンマシフ頂上目前。出発前に手を合わせた2人の仏前に、成功の報告ができるよう頑張りたい。(冒険家&レーシング・ドライバー)