第40回
 南極大陸最高峰ビンソンマシフ(4892m)の頂に立った。ひどい悪天候で、ずっとハイキャンプで足止めをくらっていたのだが、素晴らしい好天に恵まれて無事登頂できた。

 ガイドと2人で9時にキャンプを出発。約5時間で山頂に到着して、無事にハイキャンプまで下山してきた。これで7大陸最高峰7座のうち5座に登頂。残り2座になって、去年亡くなった2人と一緒に見た夢に一歩近づいた。

 今回の公募隊登山にはガイドがいて、しっかりと安全を優先した行動をしてくれるので、比較的危険度の低い登山。ところが他の人に比べて体力のある僕は、ガイドの提案でノーマル・ルートとは違うルートを使うことになった。どうやら「普通ではつまらないだろう」という配慮らしいが、ガイドのご提案に従ったら雪に覆われたコースで、結構大変だった。

 そうやってたどりついた頂上から見える風景は、筆舌に尽くし難い美しさだった。ビンソンマシフが属するエルスワール山脈の山々が目の前に広がり、その先に真っ白な大陸。遠くユーラシア大陸の果てが見えそうなヒマラヤも雄大だが、大陸のスケールの大きさを感じるという意味では、ビンソンマシフからの眺めも素晴らしい。

 この風景を写真に撮って、みんなにも見せたかったのだが、持って行ったカメラが故障。仕方なく、同行のガイドのカメラで記念撮影をしてもらった。

 ところで、天候の回復を待った1週間の間、同じ隊にいた70歳の米国人のおじいさんとずっとテントの中で一緒だった。他にすることもないので、その間おじいさんといろいろな話をした。

 正直、「おじいさん、体力は大丈夫かな?」と思ったのだが、昔から山登りをしてきたらしく、見事に登頂を果たした。僕の3倍くらい遅いスピードだったけれど、70歳という年齢で、南極大陸の最高峰に挑戦しようというパワーには心底圧倒された。今回はこのおじいさんとの出会いが僕の大きな財産になった。

 さて、登頂はしたのだが、実はまだハイキャンプにとどまっている。あくまで公募隊なので、参加者全員が下山するのを待ってから次の行動というわけだ。

 この後、ベースキャンプまで下りて、パトリオットヒルズというキャンプに向かい、チリのプンタアレナス行きの飛行機に乗る。パトリオットヒルズでは南極点ツアーのメンバーの帰りを待つことになるので、また何日か待機することになりそうだ。

 70歳のおじいさんと一緒に、健闘をたたえ合いたい。(レーシング・ドライバー&冒険家)