第119回
 陸前高田市を舞台とするサイクルイベント「ツール・ド・三陸サイクリング チャレンジ2012 in りくぜんたかた」の開催が正式発表になった。僕もグッド・チャリズム宣言プロジェクトリーダーとして、その記者会見に出席してきた。

 震災によって途絶えていた東北の夏の風物詩のひとつが、いよいよ9月に再開される。このイベントが成功し、地元の人々が普通の暮らしを取り戻す活力になってほしい。ただ正直なところ、自転車イベントを1回やったくらいでは、復興への貢献は小さいだろう。復興には長い時間とお金が必要だ。

 たとえば、カキの養殖いかだは修復されたが、実際に出荷できるまでは3年くらいかかるそうだ。農作物も同じだ。田畑から豊かな収穫を得るには、土を作る時間と労力がいる。果樹栽培ならば木が育つまで何年もかかる。犠牲者の中に高度な技術やノウハウを持つ人もいただろうから、人材を育てる時間も必要。

 いろんなものが元通りになって初めて、やっと普段の生活が人々に戻ってくる。気の遠くなるような労力だ。無理も無い。先人たちが作り上げたものが、一瞬にして倒れて流されてしまったのだから…。

 一方で、「奇跡の一本松」を保存しようという動きがあるそうだ。同様に大勢の人が亡くなった市役所や、お母さんが子供に残したメッセージがある壁など被災の象徴を残そうという声があると聞いた。震災と津波を風化させず後世に語り継ぐ、それはちょうど広島の「原爆ドーム」みたいなものだ。ただ、そういう象徴は主観的なものだから、人によって対象物は違うだろう。

 逆に二度と見たくないという意見もあるそうだ。難しい問題だ。しかも、こういうものを保存するにはお金がかかる。陸前高田市の戸羽太市長さんは「今の陸前高田市にはそのお金は無いのです」と表情を曇らせた。

 何をするにも、継続的なたくさんの力が必要だ。でも、被災地には人・物・金が不足している。現地に来て歩いてみれば一目瞭然。「復興が遅々として進まない」という話は無理も無い。部分的に復興したとしても、周囲が復興していないから経済が回らない。そして、経済が回らないから復興も進まない。

 今回の自転車イベントも貢献度としては小さいかもしれない。でも参加者が集まって宿泊や飲食をすれば、被災地外からのお金が落ちる。だから、ぜひ皆さんにはこの9月に陸前高田市に来てほしい。9月8日(土)と9日(日)は、陸前高田市に大勢の人が集まってくれることを期待する。(Team UKYO代表)