第120回
 F1ドイツGPとインディカー第11戦で、われらが日本人ドライバーがそれぞれ自己最高の結果を出した。ここのところ2人ともいけそうでいけない状況が続いていたが、ようやく光を掴(つか)んだ。しかも2人とも力強いレース展開で、この先もまだまだ結果を出してくれそうだ。

 まず可夢偉についてだが、開幕戦から良いパフォーマンスを見せてきたにも関わらず、チームメートのペレスに先を越されていた。しかも、来シーズンのシートも不透明な状況。こういう状況は僕自身にも経験があり、レースで闘う以外にもいろんなものと闘うことになる。中でも最大の敵は自分。目の前にチャンスがあると浮足立ったり、焦りから思わぬミスをすることになる。ここ2戦くらいは、そういう状況が続いていたようにみえる。

 しかし、ホッケンハイムではマシンが良い方向に進んで、予選は雨で失ったものの、決勝は素晴らしいペースだった。国際映像ではあまりクローズアップされなかったが、タイミングモニターで見ていると可夢偉のペースは常にトップクラス。そして、圧巻は前戦ウイナーのウェーバーをオーバーテイクした時の強さ。

 今のF1は単純にブレーキング一発勝負ではなく、KERS(運動エネルギー回生システム)やDRS(可変リアウイング)などのエクイップメント(装置)を使いこなさないと抜けない。頭脳と勇気が合わさって初めてオーバーテイクができるのだ。ベッテルがバトンを抜きあぐねたように、意外と抜きにくいホッケンハイムで、可夢偉の見せたオーバーテイクは値千金だった。今の可夢偉にはゆるぎない自信があるようだ。

 そして、琢磨の表彰台も本当にうれしい。最終ラップの攻防でインディ500というビッグタイトルを逃したが、攻撃的な琢磨の走りは相変わらず変わっていない。全盛時代のミハエル(シューマッハー)と真っ向から勝負したガッツと、最後まであきらめない走りがアメリカでも結果につながり始めた。F1のシートを失い、アメリカに新天地を求めた時にはいろいろと揶揄(やゆ)もされた。しかし、琢磨はレーシングドライバーとしての仕事をゆるぎなく続け、再び輝きだしている。

 2人に共通するのは、自分を信じる力。努力や才能が結果につながらない時でも、自分を信じてぶれないで闘えば、必ず活路は開けるものだ。これは僕自身や僕のチームの全員、さらには世の中の人たちみんなにも同じことが言える。2人の日本人ドライバーは、当たり前だけど大切なことを僕らに教えてくれた。(Team UKYO代表)