第142回
 天気予報で雪が降ると聞いてはいたが、まさかこんなに降るとは思っていなかった。実際のところ僕が会社に向かって家を出たころは、まだみぞれくらいの降り方だった。ところが、白いものが舞う程度かと思っていたのに、仕事を済ませて外に出たら一面の銀世界。というより猛吹雪だった。交通機関が乱れてみんな右往左往だった。

 思えば昔は雪に大喜びしたものだ。子供のころの雪合戦や雪ダルマはもちろん、クルマを運転するようになってからはカウンターの練習に自分からコースに出たりした。あのころ、雪が迷惑だと感じたことは無かった。今はそれが慌てるのだから、生活が変わると、同じことでも感じ方が変わるものだ。

 話は変わるが、このお正月休みに某ゲーム機器を買った。ステアリングやペダルキットも一緒に買って、目的はただひとつ。レースシミュレーションゲーム。親戚の子供たちとガチで勝負しようと、購入して子供たちを待ち構えた。テストという名の事前練習をしておいたおかげで、デジタル世代の子供たちの挑戦を退けることができた。

 噂(うわさ)には聞いていたが、実際にやってみてそのリアリティーに驚いた。まずその絵が素晴らしい。国内の富士や鈴鹿はもちろんのこと、F1で僕が走ったコースも本当に忠実。モンツァのパラボリカをコックピットから見た風景は、久々に僕の中のレーサー魂を呼び戻してくれた。

 そして、マシンの動きがこれまた本物のようだ。ステアリングコンタクトもきちんと再現されて、グリップを感じることもできる。もちろん、風は当たらないし加減速Gや横Gも身体にかからないから、本物とは違う。それでも、コースレイアウトやコーナーの通過速度の感覚をチェックするには、これで十分。今の若手ドライバー達が練習に使っているのも頷(うなず)ける。

 調子に乗ってレースモードで頑張っていたら、どんどん本気になって前を走るクルマを必死に追いかけている自分がいた。しかもそんな僕を挑発するようなメッセージが画面上に出る。「前を追いかけろ!」。そして追いついた相手に「ここ一発勝負!!」とインに思い切り飛び込んだらスピンしてクラッシュ。「ああー、ぜんぜん成長してないなぁ」と思った。

 そんな成長していない僕だが、冒頭に書いた雪には無鉄砲になれない。朝乗ってきた自転車は会社に置いて、電車で帰宅しましたとさ。ゲームで頑張りすぎてクラッシュはしたが、僕も「恐れ」というものを知る大人になったというわけだ。 (Team UKYO代表)