悪夢のボイコット〜6台でスタートすべきじゃなかったと思う
第9戦アメリカGP編
ペナルティー明け3戦目のアメリカGP予選では上々の走りを展開した琢磨だが……(カメラ=松本浩明)
ペナルティー明け3戦目のアメリカGP予選では上々の走りを展開した琢磨だが……(カメラ=松本浩明)
 出場20台中、14台が決勝をボイコットという史上最悪のグランプリとなったF1第9戦アメリカGPで、BARホンダの佐藤琢磨もまた涙をのんだ。タイヤの安全性の問題で、ミシュラン勢と国際自動車連盟(FIA)が一歩も譲らなかった結果のドタバタ劇。復調気配濃厚の8番グリッドにつけ、巻き返しの態勢を整えていただけに、なんとかレースをやりたかった……という琢磨が、そのやり切れない思いを吐露した。(聞き手=西山平夫)

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 ――アメリカGPはミシュラン勢14台が0周リタイアという異様なレースになってしまいました。経緯を簡単に教えてください

 佐藤琢磨「土曜日の夜にミシュラン・チームが集まり『このままではレースができない』という話し合いをしていて、僕はホテルに戻ったんですが、チームとは電話でずっと密に連絡を取り合っていました。日曜日の朝も早くからチーム・プリンシパル・ミーティング(代表者会議)をやっていたんですが、終わったのが遅く、しかも解決に至らなかったというわけです」

 ――シケインが設置される方向で話し合いが進んでましたね

 「ミシュラン勢としてはシケインがないとレースができないということでFIAと話し合いを持ったんですが、サーキット側の動きはないので不安なままでした。いつも通りレースしたかったんですが、ドライバーズ・パレードの時間になってもまだどうなるか分からなかった」

 ――フォーメーション・ラップ開始は午後1時でしたね

 「12時30分にピット・レーンがオープンになり、クローズドされる12時45分までコックピットでスタンバイしていました。何か動きがない限り、グリッドには行かない予定だったんです。グリッドに着かないということはスタートしてないということで、そうなるとフランスの予選出走優先順位はまずブリヂストン勢がいて、インディアナポリスの予選順位でミシュラン勢が続くわけですが、誰かがグリッドに出るとその順番が狂ってしまう。コックピットに入って“待ち”の状態だったんですが、最初にたしかルノーが出ていって『オイオイ!』(笑)と。それを皮切りにいっせいにミシュラン勢が出た。そのまま待ってると僕らのフランスの予選出走順が1、2番になってしまうので、ピット・ロードを出ていきました」

 ――全車フォーメーション・ラップには参加しましたね

 「最後の最後までレースに参加したかった。期待としてはフォーメーション・ラップで赤旗が出るかとも思っていたんですが、チームから無線で『ピットに戻れ』という指示が来て従うしかなかった。あの時はやるせなかった」

 ――結局レースは6台のみになってしまいました

 「レースには絶対の安全性はないわけですが、ミシュランからはシケインができればバンクでの負荷が下がってレース走行は可能とアドバイスされてました。とにかく全員の安全を考えねばならず、特に観客の安全を最優先すべきで、通常のままのバンク走行で僕らがレースをスタートさせちゃ絶対ダメだと思ってました。あのレースはF1のあるべき姿じゃなかった。最悪の結末ですね。すべてのことをルールに沿って行えばああなるでしょう。でも、僕個人としては6台でスタートすべきじゃなかったと思う。レースとはいえショーの要素もあるわけで、それを無視するのはツライことです」

 ――どうすればよかったと思いますか?

 「僕の個人的な考え方としては、ミシュランがペナルティーを受ける立場なのは当然だと思います。シケインをつくって、ブリヂストン勢が前の方からスタートし、ノンチャンピオンシップ戦とするという考えもあったようですが、それではソフトなタイヤ構造だったミシュラン勢が有利になって、オーバル対策をしてきたブリヂストンが不利になってしまう。ブリヂストンが不利にならず、かつミシュランはペナルティーを受けながらも、チャンピオンシップ戦としてレースが行える妥協点を探すべきだったと思います。それが土曜日からプランニングされていればレースは全車参加の形で、できたのではないでしょうか。悲しいですね」

 ――予選はどうでした?

 「金曜日は真っ青(笑)。でも、土曜日になるとパフォーマンスが上がってきました。僕は予選直前に大幅なセットアップ変更を余儀なくされて、ブッツケ本番の予選だったのがつらかった。アタック自体は悪くなかったけど、ラップ・タイムが接近していたのでポジションに響いてしまった。しかし、レースは2回ピット・ストップで、効率のいい戦略でいけたと思うので、去年のようなウルトラ・パフォーマンスはなかったでしょうけど、かなり戦えたんじゃないかと思います。たぶんマクラーレン、ルノーは速かったでしょうから、全体的にはカナダと似たような勝負になったかもしれません」

 ――今週の予定は?

 「フランスGPの前にヘレス(スペイン)で3日間のテストをやりますが、僕は後半の2日間に乗って、英国に戻って週末のグッドウッドの『フェスティバル・オブ・スピード』に参加する予定です。ヘレスでは新しいエアロ・パッケージをテストして、フランス、イギリスの2連戦に備えます」

 ――フランスGPはちょうどシリーズの折り返し点ですね

 「目標はまずは初ポイント獲得です。何しろまだろくにチェッカーを受けてないんですから。僕の折り返し点はもっと先まで引っぱろうかな、と思ってます(笑)。応援してください」