鈴鹿で今季最高のレース見せる
第17戦ブラジルGP編
最後尾スタートから10位フィニッシュを果たした琢磨。鈴鹿では来季につなげる走りをファンに届けることを誓った(カメラ=松本浩明)
最後尾スタートから10位フィニッシュを果たした琢磨。鈴鹿では来季につなげる走りをファンに届けることを誓った(カメラ=松本浩明)
 J・バトンの残留発表で突然のシート喪失。佐藤琢磨(28)=BARホンダ=は揺れる心でサンパウロ・インテルラゴスのレースを迎えた。前戦で受けたペナルティーでスターティング・グリッドが10番下がることが決まっているため、決勝は追い上げなければならない。琢磨は予選アタックをせずにエンジンを“鈴鹿スペシャル”に載せ替え、最後尾から巻き返しを図った。その結果は――。琢磨がレースを振り返る。

           ◇     ◇     ◇

 ――スタートはいきなり前でアクシデント発生

 佐藤琢磨「グリッドで前にいたトゥルーリ(トヨタ)とほぼ同じようなペースで加速していったのですが、目の前でものすごいクラッシュ。ウィリアムズの1台が横っ跳びになって、けっこうパーツも飛んで来たので、避けるのに一生懸命。最初アウト側にいたんですけど、1コーナーで2台のマシンがからむように外側に出て来てしまったので、内側に避けるような形になりました」

 ――間一髪。しかし一気に11番手にジャンプアップ

 「目前のアクシデントはなんとか潜り抜けた。しかし、その後はマシンが滑ってしまいました。スタート直後はまだ路面が何カ所か湿っていて路面温度が低く、マシンがかなりロー・ダウンフォース・セッティングだったこと、燃料もワン・ストップ作戦だったので相当積んでいたこともあって、タイヤが全然温まらなかったんです。前のクルマについていくのが精いっぱいという状況で、とてもオーバーテークなんて仕掛けることもできなかった。でも、しばらくすると徐々に路面も乾いてきたし、燃料が減ってクルマも軽くなるとちゃんとした負荷がかかってクルマが走るようになった」

 ――ラップ・タイムが1分15秒台前半から1分14秒台前半に1秒アップしました

 「そう、グンと上がって、一時期はワン・ストップとしてはターゲット通りのラップ・タイムに戻っていい感じに。ところが、ピット・ストップ前のある周に突然遅くなった」

 ――ピット・ストップが37周目でしたが、35周目に1秒近く落ちてます

 「クルマの納まりが急に悪くなった。リア・サスペンションの一部に問題が起きたことは確実で、すぐに無線でチームに『データを見てくれ』と連絡。ピットの返事も『明らかに車高がおかしい』と。でもどうすることもできない。その後はひどかったですね。レースが終わったいまも目が振動で治まらないくらいで(笑)、まったくブレーキング・スタビリティーがないし、トラクションもかからない。せっかくロー・ダウンフォースにしてるのに、最終コーナーを立ち上がる時にリアが浮いてトラクションコントールが利き、全然スピードが上がらない」

 ――原因は何だった?

 「いまはまだ車両保管中でエンジン・カバーを開けられず、何とも言えないんですけど、リア・サスペンションを構成しているパーツの一部に問題があったことは確かだと思います」(ホンダ・レーシング・ディベロップメント=HRD=の中本修平エンジニアリング・ディレクターの推測ではリア・ダンパー折れ)

 ――タイムはともかくトラブルが発生していたとは見えませんでした

 「外から見えないっていうのはすごく歯がゆいですね。それでも何とかゴールまでクルマを運ばなきゃと思って精いっぱい走ったし、結果的にクルマももったので、そういう意味では良かったです」

 ――思わぬトラブルでターゲットに届かなかった?

 「ワン・ポジションでも上での入賞を目指し、コース上でオーバーテークするためにロー・ダウンフォースにしたのですけど、天候もメカニカル的なこともかみ合わなかった。そういう意味ではすごく悔しいですね」

 ――10位という結果については?

 「悔しいです。けれど鈴鹿のための準備レースだったから、クルマが痛手を負った状態でもゴールまで導くことが一番大事。真ん中まで持っていけたのは良かったと考えています」

 ――鈴鹿では予選発進順11番手

 「少なくとも最初の5台のグループではないってことが大事。トラックのコンディションが良くなっていくし、11番手は天候がどっちに崩れても一番いいところかな(笑)」

 ――予選前に載せ替えた“鈴鹿スペシャル”エンジンの調子は?

 「問題なし。でも、今回はオーバーテークするチャンスがなかった。パワー自体は出てるけど、それを受け止める側のクルマがメカニカル・トラブルを起こし、何とも言えません。それでもテスト通りのパフォーマンスは出ていたと思います」

 ――車体故障が起きてからエンジン回転は落とした?

 「エンジンに負担がかからないようなミクスチャー(燃料と空気の混合割合)で走りました」

 ――日本グランプリに向けての抱負を

 「現実は見なきゃいけないですけど、僕自身1年間楽しみにしてきた鈴鹿です。ファンの皆にはぜひサーキットまで来て楽しんでもらいたいですね。僕の今季最高のレースを見せるつもりだし、そのための準備はここまで全部やってきたので、いいレースをして来年につなげていかなければと思ってます。残り2戦。もうテストもないので、ここまで一緒にやって来たチーム・メンバーと一緒に頑張ります。鈴鹿でお会いしましょう、応援してください!」(聞き手=モータースポーツ・ジャーナリスト・西山平夫)