2016年第17戦日本GP特集
ヘッドセットをつけて真剣なまなざしのアロンソ(JVCケンウッド提供)
ヘッドセットをつけて真剣なまなざしのアロンソ(JVCケンウッド提供)
 国産音響機器ブランドのケンウッド(現JVCケンウッド)がマクラーレンと技術パートナーシップを組んで今年で25周年を迎えた。1991年に契約を結び、日本GP(9日決勝、三重県・鈴鹿サーキット)で438戦目。数々の名シーンを陰ながら演出してきた。この長きにわたるサポートは、お互いの信頼関係のたまものだ。

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ブリエ・レーシングディレクター「驚くべき実績・成果」

マクラーレンに所属したアイルトン・セナのヘルメットにもケンウッドのロゴマークが躍る=1993年(JVCケンウッド提供)
マクラーレンに所属したアイルトン・セナのヘルメットにもケンウッドのロゴマークが躍る=1993年(JVCケンウッド提供)
 ケンウッドがマクラーレンと提携して今年で25年になる。同チームにエンジンやパワーユニットを供給してきたホンダはコンビ通算7年だから、付き合いははるかに長い。

 マクラーレンのエリック・ブリエ・レーシングディレクターは「ケンウッドとのパートナーシップは25周年の節目となるが、これは驚くべき実績・成果であり、両者の関係の強さ、深さ、固い絆の証し」と話す。四半世紀にわたって無線システムの分野で、パートナーシップを続けているのは異例中の異例だ。

 F1で勝利するためには大きく3つの要素がある。才能のあるドライバー、高性能を誇るマシン。そして、的確かつ迅速な戦略。作戦を考案し、戦略を組み立て即座にドライバーに伝える。その大きな手段となっているのが無線システムだ。

 「無線システムそのものがレースの表舞台にいるわけではないが、チームの勝利に貢献する重要な役割を担っていることは間違いない」(JVCケンウッド)。タイヤ交換やマシン調整をするために行うピットインのタイミング、コース上の異変をドライバーに伝えるためには迅速なコミュニケーション手段が必要。F1にとって無線は縁の下の力持ちといえる。

 チームに供給しているのは業務用デジタル無線機端末「NEXEDGE」シリーズをベースにF1用にカスタマイズした無線システム。エンジン音が無線音質に大きな影響を受けることから、常に改良に余念がない。ケンウッドとマクラーレン。両者の絆はより一層強くなっていく。

サポート原点はDNA F1とモータースポーツに魅了

チームで使用されている無線機(JVCケンウッド提供)
チームで使用されている無線機(JVCケンウッド提供)
 ケンウッドはマクラーレンとのパートナーシップ締結以前から、サファリラリー、WRC、ルマン24時間などに無線システムで関わりを持っていた。ケンウッドにはモータースポーツというDNAが組み込まれている。

 KENWOODブランドのイメージアップと、それによる製品販売増というビジネス戦略的な目的はもちろんあるのだが、その原点は、理屈ではなく、このDNAである。一個人が魅了されるのと同じように、ケンウッドはF1とモータースポーツに魅了され、そのサポートをし続けてきた。その結果、ブランドとして成長してきた。だからマクラーレンをサポートし続けてきたし、今後も続けていくだろう。

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100台の無線機操る縁の下の力持ち

チームをサポートする松田さん

ピットレーンのフェンスにアンテナを取り付ける松田さん(尾張正博撮影)
ピットレーンのフェンスにアンテナを取り付ける松田さん(尾張正博撮影)
 1991年にマクラーレンとパートナーシップを締結し、以後、世界を相手に戦い続けているJVCケンウッド(当時はケンウッド)。そこで2011年からF1担当として、数人のスタッフと交替で現場に赴き、チームのサポートをしているのが松田央礼(ひさのり)さん(34)だ。

 「海外勤務を志望していた。上司に挑戦の機会を与えてもらった」

 現場での主な仕事は、チームが使用する無線用アンテナの設営と無線機のプログラミング。無線の音声解析、音響評価だ。プログラミングとは事前に割り当てられている周波数で送受信できるよう無線機を調整することだ。

 チームにある約100台の無線機全てを現場で設定しており、「無線のやりとりは選手とエンジニアの間だけでなく、エンジニア同士、メカニック同士ということもある。混信しないよう担当者ごとに周波数を細かく調整する必要がある」と言う。

 現在、マシンに搭載されている無線機は全チーム統一したものを使用しているが、自社オリジナルのものもある。それがマシンに搭載されたノイズキャンセリング。コックピットからの音声からエンジン音を除去し、聞き取りやすくしている。

 他のチームから来たスタッフから「ケンウッドの無線は聞き取りやすい」と言われたことがあるという。それが決してお世辞ではないのは、他へ移籍したスタッフのこんな評価からもうなずける。「他チームへ移籍して初めてクオリティーの高さが分かった」

 マクラーレンには多くの日本企業がパートナーとして参加しているが、その先駆けがJVCケンウッド。25年間の長きにわたって縁の下の力持ちとしてチームを支えている。
1991年10月16日付、東京中日スポーツ紙面
1991年10月16日付、東京中日スポーツ紙面
 ◆ケンウッド 1946年、長野県駒ヶ根市に有限会社春日無線電機商会として設立。47年に商標を「TRIO」とし、60年にトリオ株式会社に社名を変更した。78年に業務用無線機分野に本格参入。86年に社名をケンウッドに改めた。2008年に日本ビクターと経営統合し、JVCケンウッドに。現在の本社所在地は横浜市。