2018年開幕特集
 今年もF1世界選手権が23日、幕を開ける。第1戦はオーストラリアGP(25日決勝、メルボルン)。シリーズ復帰4年目となるホンダは昨季まで組んだマクラーレンとの提携を解消。イタリアのトロロッソと新コンビを組んで逆襲を期す。チャンピオンの最有力は2年連続5度目のタイトルを目指すメルセデスのルイス・ハミルトン(33)=英国。今季は年間21戦の長丁場。10チーム20人の猛者たちが激戦を繰り広げる。

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ホンダ逆襲!

ハートレー(左)とガスリー
ハートレー(左)とガスリー
 赤っ恥をかいた過去3年の無念を必ずや晴らす。トロロッソを新たなパートナーに据えたホンダがなりふり構わずに自慢のパワーユニット(PU)を仕上げてきた。

 「トロロッソとは互いにオープンで率直なコミュニケーションが取れ、いい形で機能している。シーズン前のテストが終わっただけの段階だが、理想的なスタートを切ることができた」。今年から現場で指揮を執るホンダの田辺豊治テクニカルディレクター(TD、57)は上々の成果に胸をなで下ろした。

 マクラーレンと組んだ3年間は名門コンビ復活を期待されながら最後まで低空飛行。昨季は製造者部門で9位に沈み、シーズン途中で成績不振を理由に一方的にチーム側から提携解消を突きつけられた。結局、勝利はおろか表彰台もゼロ。全てが徒労に終わった。

 開幕前の8日間の合同テストは名誉挽回の絶好の機会だった。ホンダはそこで結果で応えた。10チーム中3番目に多い822周(約3826キロ)を記録。PUに関わる大きなトラブルはなく、マクラーレンと組んでいた昨年の2倍近くも走り込んだ。上位浮上のカギはマシンに確固とした信頼性があること。最大の懸念材料を払拭(ふっしょく)できた。

 トロロッソもかつては弱小扱いされたイタリアのミナルディをルーツとするチームだが、飲料大手のレッドブルに買収されてからは体制も強化。いまや伏兵のような存在だ。同チームのジェームズ・キーTDが手掛けたマシンは空力性能に優れ、昨季のシンガポールGPでは4位を獲得した。

 今季はF1経験の少ない2人を起用した。昨季は日本のスーパーフォーミュラで日本のレース文化を体験している元GP2(現F2)王者、ピエール・ガスリーと、昨季の世界耐久選手権王者で仏ルマン24時間ウイナーのブレンドン・ハートレー。ともに昨季の後半戦に同チームでF1デビューを果たした。

 「ホンダの技術者に笑顔が戻ったのはうれしい。テストでも限界を攻め始められている。自分たちのポジションも分かってきた」とガスリーも腕が鳴る。まずは中堅グループでトップに立ち、メルセデス、フェラーリ、レッドブルの3強に一撃を食らわせる。勝負は始まった。

 ○…ガスリーとコンビを組むハートレーも復権がかかる。昨年のアメリカGPでデビューを飾ったが、過去にはレッドブルの育成契約を切られて“下野”を経験した苦労人でもある。「トロロッソ・ホンダは開幕戦で入賞を狙える。僕もF1初ポイントを取りたい」。母国はオーストラリアの東方に位置するニュージーランド。準ホームの開幕戦で存在感を示す。

 ▼スクーデリア・トロロッソ ミナルディを買収して2006年から参戦。08年にセバスチャン・ベッテルを擁してイタリアGPでチーム初優勝。同年は製造者部門6位を記録した。昨季は同7位。フランツ・トスト代表。通算1勝(ポールポジション1回)。

メルセデス盤石 独走ハミ

W09を走らせるハミルトン(メルセデス提供)
W09を走らせるハミルトン(メルセデス提供)
 今年も独走しそうなにおいがプンプンする。2年連続5度目のタイトルを目指すハミルトンは今季のシリーズ予想を求めた報道陣に対して回答を拒んだ。

 「レッドブルやフェラーリと比較してどうかなんて知るもんか。そんなの開幕戦を迎えるまではよく分からないよ。テスト中だって相手のことなんて全く気にしていなかったからね」。新車W09は8日間の合同テストで絶好調。奇をてらった大改良が少ない正常進化版のマシンで、懸念されるような不具合は見られなかった。壊れなければ、取りこぼしも少ない。予選用のシミュレーションをすることもなく、耐久性の確認テストに時間を費やした。

 昨季は9勝にとどまり、4年連続2桁勝利を果たせなかった。が、安定感は抜群だった。全戦で入賞を果たし、F1参戦11年間で初めてリタイアなしに終わった。

 車両規則が改正され、ライバルとの性能差は詰まるとされたが、エンジニアと絶えずアイデアを出し合い、表彰式の際も目の前にいたエンジニアをつかまえて気付いたことを即座に伝えるほど。マシンの弱点を徹底してつぶしていった結果、トップを守り通すことができた。

 職場では優秀だが、サーキットから離れると羽目を外す傾向がある。昨年末も世間を騒がせた。ドレスを着たおいを性別でからかうような発言をして謝罪。さらにみそぎのため自身の画像共有アプリ「インスタグラム」の投稿を全て削除した。今年も物議を醸すことが多々あるかもしれない。

 「2012年の時は開幕7戦で勝ったドライバーが全て違った。スポーツとして面白かったよ。いろいろなチームが勝利に絡んでくる選手権であることが僕の究極の希望でもある」。本音なのか遊び心なのか。製造者部門4連覇を成し遂げるなどメルセデスが強すぎることをあまり歓迎していないようにも受け取られる言い回しだ。

 昨季はポールポジションの最多記録を達成し、72回まで数字を伸ばした。通算では史上2位の62勝を挙げ、最多勝のミハエル・シューマッハー(91勝)まであと29。今年はてっぺんにこそ届かないが、急接近するのは間違いない。

 ○…初チャンピオンのチャンスだ。メルセデスに移籍して2年目のバルテリ・ボッタス(28)=フィンランド=は同僚ハミルトンを照準に定め、勝機を見いだす。

 「パフォーマンスを発揮できるかは自分にかかっている。毎レースでルイス(ハミルトン)にチャレンジしていく。それしかない」。昨季は初優勝を含めて計3勝。元王者、ニコ・ロズベルグさんの電撃引退に伴い、後釜として急きょ起用されたが、すんなりとチームに溶け込んだ。今季は本領発揮といきたい。

ホンダと決別のアロンソ、吉と出るか?!

MCL33の横でポーズをとるフェルナンド・アロンソ(マクラーレン提供)
MCL33の横でポーズをとるフェルナンド・アロンソ(マクラーレン提供)
 ホンダとたもとを分けたマクラーレンは出遅れムードだ。合同テストではマシントラブルが多発。特にパワーユニットの熱処理にてこずり、エンジンカウルに焦げ跡が見つかるなど名門チームらしからぬ迷走ぶりだ。

 それでもエースのフェルナンド・アロンソ(36)=スペイン=は「僕らは(製造者部門)9位の位置から(トップ3に)接近するところまで行けるだろう」とどこ吹く風だ。トロロッソ・ホンダよりも成績が下回れば、沽券に関わる事態だが、「トロロッソがランク5位に入ったら拍手を送るよ」と相変わらずの減らず口だ。ホンダに見切りをつけた決断は果たして正解だったのか…。
 ○…自動車メーカー直営チームではないレッドブルも勢いがある。いきなり母国グランプリとなるエースのダニエル・リカルド(28)は「2014年にレッドブルに入ったが、今までで一番いい準備ができている」と歯切れもいい。チームメートのマックス・フェルスタッペン(20)=オランダ=も今季がF1参戦4年目。「予選からメルセデスが強いと思うが、ともかく0.3秒以内にはつけたいね」。お手並み拝見といったところだ。

 ○…フェラーリのセバスチャン・ベッテル(30)=ドイツ=は今季型車「SF71H」の強靱(きょうじん)ぶりを強調した。

 「バルセロナ(スペイン)のテストでは1日で188周も走った。875キロ。自己ベストだよ。クルマに大きな問題が出なかったので走っていて楽しかった」。昨季は5勝を挙げるも途中でマシンが壊れるレースもあり、ハミルトンに及ばずランク2位。「自分たちのクルマには自信を抱いている」と開幕戦から攻めの姿勢だ。

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<今季のトピックス>

 【ハロ導入】運転席保護装置「ハロ」の搭載が義務化された。3本の柱で組まれた構造でチタン製で、重量は7キロある。メルセデスによると「ロンドンの2階建てバスに乗られても強度に問題はない」という。

 【年間3基】パワーユニットの年間使用制限が1減の3基となった。厳密にはエンジン、ターボ、熱エネルギー回生装置は3基で、運動エネルギー回生装置など他の3部位は2基となる。罰則はグリッド降格。

 【7色タイヤ】最も軟らかいハイパーソフトと最も硬いスーパーハードが追加され、晴れ用タイヤは7種類となる。ハイパーソフトのマークは桃色、スーパーハードはオレンジ色。

 【フランスGP復活】10年ぶりに開催。1990年までの会場だった南仏のポールリカールサーキットで実施される。08年まではマニクールで開かれた。

 【グリッドガール】今年から廃止。代わりに子どもたちにグリッドボードを持たせるグリッドキッズが採用された。