セーフティーカーを言い訳にしない
第9戦カナダGP編
最下位脱出ならず悔しい表情の琢磨(カメラ=松本浩明)
最下位脱出ならず悔しい表情の琢磨(カメラ=松本浩明)
 スーパーアグリの佐藤琢磨はゴール目前で今季初クラッシュ。15位の順位こそ認定されたものの、完走することができなかった。ミッドランドのT・モンテイロを抑えていた際にタイヤかすに乗ってしまったというのだ。

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 レースが終わって1時間半。「まだ回復してないよ、ほんの少ししか」と、佐藤琢磨は言った。正直に、落ち込んでいるんだ、と――。

 走行ラインの外には、黒々としたタイヤかす。数センチでもラインを外れると、その瞬間にグリップを失う。誰にとっても厳しいコンディションは、路面を捕らえる力が低いスーパーアグリのマシンではいっそう厳しくなった。それでも、もともと難しいモントリオールのコースは腕の見せどころ。自分でも気づかないうち、他と遜色(そんしょく)のないペースで走った結果、ライバル・ミッドランドをどんどん引き離していた。

 事態を急変させたのは最後のセーフティーカー。タイヤ温度の維持が必要だとわかっていても、低速走行では冷却の問題を抱え、タイヤをウオームアップできなかった。対するミッドランドは緊急ピット・イン。セーフティーカーで遅れを取り戻し、ニュータイヤに履き替えて、信じられない勢いで背後に迫ってきた。「もう、プッシュしてプッシュして……。ずっと予選の走りでした。あのままでは終われなかったと思う。でも、あと1周だったのに」

 ニューマシンが仕上がる前に、非力なマシンでも自力で最下位を脱出する。不可能なはずの目標は、あえて自ら誓ったもの。だから、セーフティーカーを言い訳にしない。最後の瞬間に足をすくわれた自分を「なさけないよね」と、琢磨は責めていた。

 待ち焦がれたマシンが予定通りに完成すれば、SA05で戦うのは次のインディアナポリス(アメリカGP)が最後。「新車ができれば、もっと上を目標にしたいから」。ひそかな目標を達成するチャンスはあと1戦。「インディアナポリスは、ここよりチャンスが大きいと思います」と最後はきっぱり。着実にスキルアップしながら、もっと強い自分を要求する。落ち込んだ気持ちを隠さないところにも、今シーズンの琢磨の芯(しん)の強さが表れた。(今宮雅子)